2024年04月26日( 金 )

核開発に対する日本の二重基準を正すべき

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、北朝鮮の核開発を糾弾する国際社会の姿勢ははたして正しいのかと疑問を呈した9月11日付の記事を紹介する。


北朝鮮の核開発を皆が寄ってたかって非難している。日本は世界で唯一の核兵器による攻撃を受けた国。日本が核廃絶運動の先頭に立つべきことは当然のことだ。
世界から核兵器を消滅させる。核廃絶を訴えて、その文脈の中で北朝鮮の核開発を非難するのは理にかなっている。

しかし、日本は核兵器禁止条約に賛成していない。7月7日、国連は核兵器禁止条約を採択した。国連加盟193カ国のうちの124カ国が核兵器禁止条約交渉会議に出席。投票の結果、122カ国が賛成した。北大西洋条約機構(NATO)に加わるオランダが反対。シンガポールが棄権した。条約は核兵器の使用、開発、実験、製造、取得、保有、貯蔵、移転などを幅広く禁止。
当初案で除外されていた、核使用をちらつかせる「脅し」の禁止も最終的に盛り込まれた。9月20日からは、各国の署名手続きが始まる。
批准国が50カ国に達すれば、その90日後に条約が発効する。しかし、非批准国には効力が及ばない。条約推進国は核兵器廃絶の世論を喚起し、核兵器廃絶を目指している。
この条約に日本は賛成していない。

理由は、日本が米国の「核の傘」によって守られているからだという。日本は米国の核兵器保有、核兵器使用を、基本的に容認しているのだ。この判断、考え方と、北朝鮮の核開発を非難する判断、考え方が両立し得るのか。ここに問題の本質、核心が隠されている。
北朝鮮が核開発を推進しているのは、北朝鮮が米国の軍事介入、侵略によって滅ばされることを防ごうとしているからだ。
米国はイラクが核開発を進めているとの疑惑を有していた。そして、イラクは「大量破壊兵器を保有している」との判断に基づき、イラクに対して軍事侵攻した。しかし、イラクで大量破壊兵器は発見されなかった。イラクは濡れ衣を着せられ、米国等の外国軍事勢力によって破壊された。イラクに対する「侵略戦争」が実行されたのである。

この現実を踏まえて、北朝鮮は米国等の外国軍隊によって北朝鮮が滅ぼされることのないよう、核兵器開発を進めている。核攻撃能力を保有することにより、他国からの侵略戦争、他国による軍事的な制圧を回避できると判断しているのだ。
国家が外国勢力により侵略を受けて、滅ばされてしまうリスクが存在するときに、一国のトップが、これを回避するために力を注ぐのは当然と言えば当然と言うことができる。このような判断は十分に成り立ち得る。

北朝鮮の核開発を他国が非難するのは、北朝鮮が核兵器の使用に踏み切れば、多大な被害が発生するからである。
日本への原爆投下では、数十万人単位での犠牲者が生み出された。大量破壊兵器による一般市民の無差別殺傷、大量虐殺が実行されたのである。
この大量虐殺を実行したのは米国であって北朝鮮ではない。
北朝鮮は核兵器の開発を推進しているが、大量破壊兵器による一般市民虐殺、無差別殺傷を実行してはいない。実行したのは米軍のみである。

北朝鮮が核兵器開発を進め、核保有国になることによる弊害は、他の核保有国にそのままあてはまる。そして、核保有国のひとつである米国は、第2次大戦において、核兵器の実戦使用を行い、数十万人規模の大量殺戮を実行している。つまり、核開発、核兵器保有が持つ弊害というのは、北朝鮮にのみ当てはまるものではなく、すべての核兵器保有国に当てはまる問題なのである。

※続きは9月11日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1842号「核開発に対する日本の二重基準を正すべき」で。


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