2024年04月24日( 水 )

漫画・アニメ文化でにぎわい創出!北九州市に特徴を!(後)

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 今年8月、北九州の「北九州メディア芸術創造拠点事業」が、文化庁の先進的文化芸術創造活用拠点形成事業に採択された。北九州市で積み重ねられてきたポップカルチャーによるまちづくりの成果の1つである。ポップカルチャーとは漫画やアニメ、アイドルといった、大衆向け芸術のことで、正統派芸術とは区別される。多くの漫画家を輩出してきた北九州市がその価値に着目し、民間企業とともにポップカルチャーによるまちづくりを推進してきた。新たな魅力創出の歴史を紐解く。

積み重ねられた努力

駅から続く遊歩道に設置された松本零士作品の銅像は、ポップカルチャーの象徴だ

 構想では、漫画ミュージアムを核に漫画やアニメなどのポップカルチャーの集積拠点をつくるとされた。あるあるCityを保有するアパマンショップホールディングスの全面的なバックアップのもと、ポップカルチャーの「聖地」秋葉原にもないような、ポップカルチャーの拠点ビルをつくる計画が浮上する。
 そして12年、漫画ミュージアムのほかアニメイトなどのアニメ関連ショップ、劇場などを擁するあるあるCityが誕生した。

 あるあるCityは当初、小倉駅北口と南口の「格差」構造を変えるほどのインパクトがあるのかという懐疑的な目で見られていた。それほどラフォーレ原宿小倉の惨状がひどかったともいえるのだが、実際は想定を超える成果を生むことになった。
 13年3月末には累計来館者数が200万人を突破。オープンから1年を待たずに当初の目標を達成してしまったのである。小倉駅の北口に新たな人の流れが生まれたのだ。

 この成功の陰には、あるあるCityを運営する側のたゆみない努力があった。あるあるCityでは連日、声優などを招いたコンサートを開くなど、地道な活動を続けていた。あるあるCityを運営しているのは、本来は不動産業を主事業とするアパマンショップホールディングスだ。当然、ショービジネスなどの経験はない。しかし、経験のなさをものともせずに、壁にぶつかりながらもやる気と努力で声優やアイドルなどを呼び続けたのである。「ここに来れば、何かがある」、そのコンセプトを見事に体現したのは、実はアニメやアイドルとは無縁だったスタッフたちの努力だったのだ。連日の活動を通じて徐々に知名度が高まり、今では各方面からイベントをさせてほしいという声をかけてもらえるまでになったという。
 北九州市に新たな魅力を追加したのは、こういった地道な取り組みだったともいえる。

文化で北九州市に元気を!

 北九州市自体も、あるあるCityが築いた実績に着目し、ポップカルチャーによる地方創生に本腰を入れることとなる。
 14年、小倉駅北口周辺の公園やあるあるCityなどを中心に「北九州ポップカルチャーフェスティバル2014」が開催された。アニメ「パトレイバー」に登場するロボット「イングラム」の実物大モデルが会場に展示されるなど、全面的にポップカルチャーを打ち出した祭を開催したのである。今年の同フェスティバルは11月4日、5日に開催される予定で、多くのファンから期待の声が上がっている。

 今年8月には(一財)アニメツーリズム協会から「訪れてみたい日本のアニメ聖地88(2018年版)」が発表され、福岡県内では唯一「北九州市漫画ミュージアム」が選定された。北九州市は今回の選定を、北九州市漫画ミュージアムの入るあるあるCityがポップカルチャーの複合施設として総合的に評価されたとみている。

 今年8月、北九州の「北九州メディア芸術創造拠点事業」が、文化庁の先進的文化芸術創造活用拠点形成事業に採択され、市はポップカルチャーによる活性化に一層力を入れている。こうした拠点となることで、海外からの集客(インバウンド)とともにクリエーター育成などのポップカルチャーネットワークが構築されることも期待されるだろう。
 北九州市をポップカルチャーで盛り上げる。アニメ、漫画といった文化を北九州市の文化とすべく、官民力を合わせた取り組みは続けられていく。

(了)
【柳 茂嘉】

 
(前)

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