2024年04月20日( 土 )

『ワンダーフォーゲルがくれたもの』貴重な50年前の体験記

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 かつて青春をささげ、苦労を共にしたワンゲル仲間による、50年前の貴重な体験記。すばらしい自然と、その土地の人々との心温まる交流が今も思い出に残っています。

北アルプス・裏銀座コースを歩く名古屋大ワンダーフォーゲル部

女子パートの夏合宿記

 今日は沈殿日(休息日)、テント設営地で洗濯。石鹸を泡だて、洗濯物を石で叩いて岩の上に干す。
 予定の登山を終え下界に下り、妙高郵便局で手紙を受け取る。買い物を済ませ炎天下を古海小学校へ向かう。畳敷の家庭科教室をお借りする。合宿に来て初めてテントを張らずに寝ることができる。夜は先生方と雑談、久しぶりに新聞、テレビを見る。

北アルプス 涸沢岳(3,110m)から槍ヶ岳(3,180m)を望む

延岡から人吉まで歩いた3年次の春合宿

 大崩山(おおくえやま1643m)では季節外れの雪に見舞われ、先頭のサブリーダー2年生H君は雪で濡れた体を震わせていた。やっと日之影町の見立鉱山に下山。若い社員宅でカニ缶の夕食をご馳走になる。
 数日後、山深い谷川の長い吊り橋に足がすくみ、背中もズーンとする。下を向かないで一歩一歩とて足を進め、やっと渡りきったら小学校にたどりついた。五家荘の樅木小学校である。学生証をみせ、先生の好意で保健室に男性5人を泊めてもらう。翌日は沈殿日、『今日、先生が一人欠席なので授業をしてもらえませんか?』 後輩のY君が幾何の授業を5年生のクラスで始めるが、公式を忘れていた。

大崩山群・わく塚の紅葉

 春合宿で台湾に行ったパート

 目的の台湾の最高峰・玉山(3952m)に登れず、街中で途方に暮れていると『どうかしたか』と現地の人に声を掛けられる。『日本山学会に加入していないので玉山に登れない』と応えると、事情を知った現地新聞社の記事になり、台湾政府の好意で無事に玉山に登ることができた。

3年時・九州縦断春合宿男性パート

 我々はどうして苦しい思いをして歩くのであろうか?
バスや汽車があるのにどうして苦しみに会おうとするのであろうか。1カ月もの長時間を費やし、足にマメを作りながら九州縦断をして貴重なものを得た。山越え野越えで門司から鹿児島まで30日間も歩き通した。

 今の学生では、とてもこんな体験はできないのではないだろうか。実に貴重な日々だった。

2017年10月10日記
脊振の自然を愛する会 代表 池田友行

 

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