2024年04月24日( 水 )

「2人に1人が福岡にUターン希望」を真剣にとらえるべきこれだけの理由

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 近年、福岡県へのUターン・Iターン移住者が増えている。
 記者の周りだけでも、移住者の名前を10数人は挙げることができる。なにしろ、記者本人もUターン移住者だ。
 この動きを裏づけるような調査結果が発表された。(株)電通九州(所在地:福岡市中央区、堀宏明代表)は6日、「首都圏在住者のUターン意向調査」を公表した。
 これによると、首都圏に上京した福岡都市圏出身者の52%(男性:54.9%、女性:46.6%)にUターンの意向があるという。とくに男性は「2~5年以内」にUターンしたいという要望があるという結果が出た。
 同調査では福岡県出身者は他の都道府県に比べると「地元愛」が強く、「離れてみて出身地のよさ・魅力を再認識した」「出身地に貢献したい」などの理由でUターンを望む声が多かったこともわかった。また、福岡の魅力として「食べ物がおいしい」「自然が豊か」「のんびりしている(ゆとりがある)」など生活面にポジティブな感情を抱いていることも多い。

 記者が知る移住者からも、生活面でのメリットを評価する声が多く挙がっている。「ドアツードアで1時間もかからないのに、きれいな海が見えるマンションに住める」(埼玉から移住・30代女性、製造業)「近所のスーパーどころか、回転寿司のお魚までおいしい。東京と同じチェーン店とは思えない」(Uターン・40代男性、インターネット通販)「野菜もお肉も、東京で同じものを食べようとするといくらかかることか」(東京から移住・40代男性、フリーライター)。

 その一方で、福岡に住み続けている福岡出身者にはその利点が理解されない場合も多い。上述の30代の女性は西区に居を構えたが、「同僚に『なんでわざわざそんな遠くに住むのか。オフィスは天神なんだから、徒歩か自転車で通える範囲に住めるのに』と言われた」と笑った。わずか1時間弱の通勤時間を我慢するだけで海を望むマンションに住める、というのは東京ではありえないことだが、福岡では当たり前すぎるのだ。また食べ物も、生まれついた場所のものは当たり前になっていて、案外評価しづらいものだ。
 となると、進学や就職で福岡を離れて首都圏に移り住んだ福岡出身者が、福岡の暮らしについて高い評価をしているということには大きな意味がある。つまり東京という別の土地に触れたうえで、福岡を再評価していることになるからだ。

 また、移住者からよく聞くのは「移住しようとしてまず考えるのは仕事、そして住居」という言葉。職・住を確保できるかどうかが一番の懸念だというわけだ。電通九州の調査でも、Uターン希望者が「障害となっていること」として挙げているのは、「現在の収入水準を維持するのが難しい」「自身の経験やスキルを活かせる仕事(就職先)がない/働き方ができない」と、職業面での不安を強く訴えている。ここ最近、有効求人倍率や正社員求人倍率が増加し、多くの企業が人手不足を感じている。確かに首都圏の給与水準とは差があるが、現在求人市場は大幅に売り手市場に傾いている。九州経済調査協会の調査によれば、福岡や九州の今年度の景気は全国平均を上回る好調ぶりだ。とくに輸出と設備投資がこの好景気をけん引しており、関連する業界での経験がある人材は引く手あまたなのは間違いない。Uターン希望者は東京でもたびたび行われている福岡・九州の企業による求職フェアに足を運んでほしいし、また福岡の企業も東京で培った技能・経験を持つUターン労働力をうまく取り込んでほしい。

 現在、福岡県は全国でも珍しい転入超過の県。移住者側も地元企業側も、この条件を十分に生かしてよりよい求人マッチングを実現できるタイミングが来ている。

【深水 央】

 

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