2024年04月20日( 土 )

PM2.5による大気汚染、今後1~2年で大幅改善か

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

(提供:九州大学)
※クリックで拡大

 ここ福岡においては、天気予報でも飛散予想が報じられるなど、市民生活にさまざまな影響を与え続けている「PM2.5(微小粒子状物質)」。花粉症などのアレルギー症状の悪化や呼吸器系疾患、さらには肺がん発症のリスク上昇などの健康への被害を引き起こす可能性のある大気中の“厄介者”で、呼吸器系への侵入を防ぐためとしてPM2.5対応のマスクまで販売されているほど。
 そのPM2.5による大気汚染が、今後1~2年のうちに急速に改善していくかもしれない――。日本における最近のPM2.5大気汚染の減少傾向について、九州大学応用力学研究所の鵜野伊津志教授らの研究グループが発表した。

 2013年に中国・北京周辺での高濃度大気汚染が大々的に報じられて以降、日本でも中国大陸からの国境を越えた高濃度汚染の影響が危惧されており、なかでもPM2.5による大気汚染は西日本を中心に大きな環境問題となってきた。だがここ数年、汚染状況に大幅な改善が見られる。日本では09年にPM2.5に対する大気環境基準が設定され、現在は1,000カ所以上での常時監視のもとで汚染状況の把握が行われているが、14年から16年にかけての日本国内における年平均PM2.5濃度は全国的に減少。環境基準達成率も14年の37.8%から16年には約88%と、大幅な改善傾向にあるという。

 今回、鵜野教授率いる九大の研究グループはこの改善傾向の原因について、中国での排出量・濃度の減少と化学輸送モデルによる「ソース・リセプター解析(※)」を用いて調査を行った。中国の地上におけるPM2.5濃度や、大気汚染を引き起こす原因物質であるSO2(二酸化硫黄)やNO2(二酸化窒素)の衛星計測濃度は、年率約10%で減少しており、これは排出量の減少によるものと考えられるという。ソース・リセプター解析の結果では、中国でのPM2.5濃度が20%低下した場合、福岡のPM2.5年平均濃度は約12%減少することが判明。これは、14年から16年にかけて福岡市で観測された減少量(約10%)に相当するという。
 この調査結果を受けて鵜野教授は、「中国国内でのPM2.5レベルは依然として基準超過の状態だが、現在の中国での排出量の減少率が継続すると、日本国内では1~2年のうちにPM2.5の年平均基準を満たす地点が増加すると予想される」と説明。日本国内での高濃度PM2.5越境問題は、今後、急速に改善に向かっていくとの見解を示している。

 中国大陸に近いという地理的な要因から、PM2.5や黄砂などの大陸からの飛来物に悩まされることの多い福岡市民にとって、今回の九大の発表は喜ばしいニュースとなりそうだ。

【坂田 憲治】

※ソース・リセプター解析:特定の発生源(ソース)から排出された物質が、ある観測地点(レセプター)の環境濃度にどの程度の影響を与えるかを解析する手法。

<画像説明>
(a):2013~16年度の4年間平均のPM2.5濃度分布
(b)~(e):各年度の平均PM2.5濃度から、(a)の4年平均値を差し引いた濃度

提供:九州大学

関連記事