2024年04月19日( 金 )

中国の進める現代版シルクロード「一帯一路」に欠ける防災教育

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、11月24日付の記事を紹介する。


 30年を超える改革開放政策の結果、GDPで世界第2の経済大国となった中国。その最高指導者として2期目を迎え、意気揚々といったたたずまいの習近平国家主席である。先の第19回共産党大会では権力基盤を固め、毛沢東や鄧小平と肩を並べるほどの力を内外に見せつけた。「中国の夢」を掲げ、「世界の大国を目指す」と高らかに歌い上げたものだ。

 その夢を実現するため、自らの肝いりでアジア・インフラ投資銀行(AIIB)などを立ち上げ、新興国を中心にインフラ整備に力を入れ、グローバルなスケールでの「仲間づくり」にも成果を上げ、存在感はゆるぎないものになっている。そして、今や世界が一目を置く現代版シルクロードと呼ばれる「一帯一路計画」を通じて、アジアとヨーロッパを結ぶ新たな物流インフラの建設に余念がない。

 この計画には国連始め、100を越える政府や国際機関が協力文書に署名をしているほどだ。安倍政権も日本の経済界もこの遠大なインフラ整備計画に食い込みたいと、このところ売り込みに余念がない。数年前までは「透明性が確保されていない」と、慎重かつ批判的な姿勢を取っていた日本だが、今や「バスに乗り遅れるな」と様変わり。

 もちろん、「一帯一路」計画に熱心な姿勢を見せている国は多い。たとえば、サウジアラビアもそうだ。日本以上に石油を輸入してくれる中国はサウジにとっては大事なお得意さまに違いない。脱石油社会への変革を模索するサウジは「サウジ・ビジョン2030」を打ち出している。実は、この中期・長期計画にとって、習近平主席の「一帯一路」は補完効果が期待できるため、両国はすでに50を越える協力プロジェクトに合意済みである。中国企業は早くも145億ドルの投資を行っている。

 欧米諸国から人権問題に絡んでの批判を受けても、習近平は「どこ吹く風」と言わんばかりで、ユーモアたっぷりに切り返す。曰く「靴が合っているかどうかは、靴を履いている本人しか分からない」。厳しい批判にも、中国式の知恵を絡めた自信と迫力で対応している。

 この点、独裁的な王室体制には内外から懸念の声も上がっているサウジとは共通点も多く、サルマン国王も若き後継者と目されるムハンマド皇太子も習近平主席との間では日本で見せた以上の笑顔を振りまいている。また、最近、ムハンマド皇太子は200名を超える王子や経済人を「汚職容疑」で逮捕監禁し、「釈放して欲しければ財産を出せ」と迫っている。こうした手口も習近平が進める「腐敗撲滅」作戦と似ていなくもない。

 中国とサウジアラビアが手を結べば、「一帯一路」の実現は一層加速するだろう。しかし、「好事魔多し」の例えではないが、強権的な両国が直面する課題も山積だ。たとえば、サウジの突然の逮捕劇は欧米諸国の投資家からは危惧の念をもって見られている。「脱石油社会」への舵を切るための必要な資金を確保しようとの試みではあろうが、それまで欧米への投資活動で中心的役割を演じてきた複数の王子らを一挙に拘束する手法には違和感を覚える経済人が多い。そのため、カントリーリスクが高まり、サウジからの撤退を検討する欧米企業も出始めている。

 一方、中国に関しても懸念材料には事欠かない。具体的にいえば、南シナ海の岩礁埋め立てやアメリカをターゲットにしたサイバー攻撃などは、国際的なルールを無視した「力による現状変更」として、欧米や日本では評判がすこぶる悪い。結果的に、アメリカ主導の経済制裁の対象にもなり、国際的な不信感が増す原因となっているわけだ。

※続きは11月24日のメルマガ版「世界最新トレンドとビジネスチャンス」第89回「中国の進める現代版シルクロード「一帯一路」に欠ける防災教育(前編)」で。


著者:浜田和幸
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