2024年04月20日( 土 )

株価上昇でも日本経済は超低迷という真実

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、株価高騰がかつてのように好景気を表すわけではなく、一部の大企業の業績にしか依らないと喝破した11月23日付の記事を紹介する。


新著の2018年版TRIレポート『あなたの資産が倍になる 金融動乱に打ち勝つ「常勝投資術」』(ビジネス社、税込み1,620円 )が、発売そうそう、重版決定となった。アマゾンの「各国経済事情」ジャンルでベストセラー1位の支持をいただいている。ご高覧賜っている読者のみなさまに深く感謝を申し上げる。

昨年11月末に上梓した2017年版『反グローバリズム旋風で世界はこうなる 日経平均2万3,000円、NYダウ2万ドル時代へ!』は、見事に予測を的中させた。年次版TRIレポートは、会員制レポートであるTRIレポート『金利・為替・株価特報』の年次版を一般公刊しているもので、2018年版がシリーズ第6弾になる。2017年版では、トランプ政権発足による内外の株価上昇が1時的なバブルであるとの見方が優勢を占めるなかで、少数見解を提示した。

実際に、予測どおりの現実が生じたが、金融市場予測は常に極めて難しい。また、過去の予測が正しかったことが、未来の予測の正しさを保証するものでもない。現実はすぐに目の前にはっきりと姿を現す。予測は真剣勝負そのものである。
しかし、適正な予測が効果的な投資戦略構築の必須の条件になる。政治経済金融情勢分析は、この意味で常に極めて重要な事項になる。

日経平均株価は昨年11月9日に16,111円という安値を記録した。米国大統領選の開票結果を受けた安値だった。クリントン勝利が確実視されていたが、トランプの勝利が確実になった。この開票結果を受けての株価急落だった。しかし、この16,111円を起点に日経平均株価は上昇に転じ、本年11月9日に23,382円の高値を記録した。上昇幅は7,271円、上昇率は45.1%となった。2017年版TRIレポート表紙カバーに「株価再躍動」と記述した通りの結果になった。

この株価上昇を「バブル」だと評価する意見があるが正しくない。株価上昇には合理性がある。上昇するべくして上昇した。しかし、このことが日本経済の好調を意味するのかといえば、それも違う。かつては、株価は経済を映す鏡の存在だと言われたが、現在は違う。株価は上場している企業の収益状況を映す鏡だが、経済全体を映す鏡ではなくなった。
現在の日本経済は、全体としては極めて不調、低迷している。しかし、大企業の収益だけは、突出して拡大している。この突出して拡大している大企業の収益状況を株価が反映しているのである。

新著『あなたの資産が倍になる』に日本株価の決定要因を記した。2012年以降の日本株価の変動を分析すると、企業収益以外に株価変動を左右している重要な要因が3つある。ドル円レート変動、NYダウ、上海総合指数なのだ。これらの4つの要因がすべて日本株価上昇を支える方向に重なれば、日本株価
が上昇することは極めて順当ということになる。

9月9日を境に日経平均株価は上昇に転じた。そして、11月9日まで、4条件がそろい踏みして日経平均株価23,000円が達成された。すべては順当な変化であった。

この間に10月22日に衆院総選挙があった。第2次安倍政権発足時以降、国政選挙のたびに株価上昇が観察されている。日銀や公的年金資金が選挙に合わせて株価吊り上げを目的に行動している側面もある。そして安倍政権は、この株価上昇を選挙対策としても活用してきた。
その際、最大の側面援助をしてきたのが日本のマスメディアである。株価上昇をことさら大きく取り上げて、与党の応援を行ってきたのである。

しかし、株価は日本経済の現況を表す尺度にはなっていない。
一握りの大企業の収益状況しか反映していないのだ。

日本経済は超低迷の状況にあるにもかかわらず、株価だけが上昇した。こうした経済の実相を正確に把握することが肝要である。

※続きは11月23日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1902回「株価上昇でも日本経済は超低迷という真実」で。


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・植草一秀の『知られざる真実』

 

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