2024年03月29日( 金 )

被害者への謝罪なき日馬富士略式起訴ありえない

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 NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、日馬富士引退会見から見た今回の傷害事件の実相について語った、11月30日付の記事を紹介する。


横綱日馬富士が引退届を提出し、引退会見を行った。極めて意義深い会見になった。「意義深い」という意味は、今回の傷害暴行事件の本質を多くの面で明らかにする会見になったという意味である。

この会見で明らかになった重要論点を3つあげておこう。
第一は、日馬富士も伊勢ヶ濱親方も、2007年の傷害致死事件を反省し、その教訓をまったく生かしていないことである。
第二は、日馬富士からも伊勢ヶ濱親方からも、貴ノ岩および貴乃花親方に対する謝罪が一切なかったことである。
第三は、日馬富士が暴行を行ったことに対して「正しいことをした」と説明し、その経緯を説明しておきながら、記者からの質問で詳しい経緯を聞かれると「捜査中であると」として、詳しい説明を拒絶したことだ。

完全なる「矛盾」である。この「矛盾」によって会見は完全に崩壊したといえるだろう。

今回事案の本質は、現役横綱による暴行傷害事件である。被害届が提出され、警察が捜査を進めている、れっきとした刑事事件である。刑事事件の捜査は警察が行う。相撲協会が行うものではない。
貴乃花親方が協会による調査に非協力的で、警察の捜査にすべてを委ねているのは、相撲協会が強い隠蔽体質を有しており、適正な調査が行われる可能性が低いことを踏まえたものであると考えられる。相撲協会は11月2日に警察からの連絡で事件概要を把握しておきながら、問題を公表せず、日馬富士の九州場所出場を認めていた。隠蔽体質を示すこれ以上の証左はない。

この事実を踏まえて貴乃花親方は協会の調査には協力せず、警察捜査にすべてを委ねたのだと考えられる。2007年に相撲協会は暴行傷害致死事件を引き起こしている。その教訓を踏まえれば、「暴力根絶」が根本におかれていなければおかしい。ところが、今回、日馬富士はカラオケ入力装置という凶器を用いて、頭部裂傷という重傷を負わせた。犯行の様態によるが、「殺人未遂」と判断されておかしくない重大な刑事事件である。

日馬富士は自己の行動を正当化し、引退会見でも「正しい行動」と言い放ったが、このことが、2007年の傷害致死事件の教訓をまったく踏まえていないことを明白に物語っている。日馬富士は貴ノ岩の「礼儀・礼節」がなっていないとして、凶器を使った暴行傷害を正当化しているが、「礼儀・礼節」を諭すために暴行傷害を行うことが「礼儀・礼節」に根本的に反する行動である。

事実関係はまだ明らかでないが、これまでに報じられている情報を総合すると、日馬富士が貴ノ岩に呼びかけたが、酒席の騒音のために貴ノ岩には日馬富士の声が聞こえなかった。その際に、貴ノ岩が携帯電話を操作していた。これに激昂して日馬富士が一方的に暴行、傷害に及んだ。
このような事実経過だったのではないか。

現場にいた関係者の中の日馬富士サイドのメンバーが口裏合わせをしている可能性もあるため、捜査でどこまで事実が明らかにされるか不透明であるが、日馬富士が一方的に暴行・傷害を行ったことははっきりしていると見られる。
「礼儀・礼節に反すると判断すれば、暴力を用いてよい」との考え方が、「礼儀・礼節」から最もかけ離れた暴挙である。

日馬富士はこんなことすら理解できていないようであり、これこそ横綱の品格を欠いていることの証左であるといえる。

※続きは11月30日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1908回「被害者への謝罪なき日馬富士略式起訴ありえない」で。


▼関連リンク
・植草一秀の『知られざる真実』

 

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