2024年04月19日( 金 )

2018年トランプ政権最大の懸念要因は何か

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 NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、エルサレムのイスラエル首都認定などまたも極端な言動に走るトランプ政権の狙いを考察した12月17日付の記事を紹介する。


2018年に向けて米国トランプ大統領の政権運営に軌道修正の可能性が浮上している。トランプ大統領は12月6日、エルサレムをイスラエルの首都と正式に認定した。この認定に基づき、トランプ政権はテルアビブに設置してきた米国大使館をエルサレムに移転する準備に取りかかるという。

さらに、12月20日にはペンス副大統領がエルサレムを訪問する予定を発表した。トランプ大統領が突然、エルサレムをイスラエルの首都に認定した背景として指摘されているのは、12月12日に実施されたアラバマ州での上院議員補欠選挙である。
この補選では、共和党候補のロイ・ムーア氏が敗北した。共和党の牙城であるアラバマ州で共和党候補が敗北した影響は極めて大きい。昨年の大統領選挙でも、アラバマ州ではトランプ大統領がクリントン候補に約28%ポイント差で勝利している。
そのアラバマ州で共和党が敗北した。
共和党候補のロイ・ムーア氏はアラバマ州の元最高裁長官という経歴を有するが、補選のさなかに、過去に少女に対してわいせつ行為を行った疑惑が浮上していた。現在米国では、有力政治家を含めたセクハラ疑惑の告発が相次いでおり、複数の現職議員が辞職に追い込まれる事態に至っている。このなかでムーア候補に対する疑惑が浮上し、当初有利とされていた選挙戦の状況が一変し、大接戦に至っていた。
この選挙情勢がトランプ大統領の行動に強く影響したと見られている.

トランプ大統領の娘のイヴァンカ氏は候補者差し替えを主張し、トランプ大統領は最後まで判断に迷ったと伝えられているが、最終的に候補者をさしかえなかった。このなかで、トランプ大統領はエルサレムをイスラエルの首都に認定したのである。
アラバマ州はキリスト教保守派=福音派が優勢な地域である。キリスト教福音派は、聖書の記述に沿ってエルサレムの地をイスラエルに差し出すことを主張している。
トランプ大統領はアラバマ州のキリスト教福音派の支持者の票を固めるために今回の首都認定を行ったのだと推察されている。しかし、ムーア候補が僅差で敗北したために、この認定は功を奏さなかったことになる。ムーア候補はまだ敗北を認めておらず、投票の再集計を求めているが、恐らく結果は覆らないであろう。

これまで上院の議席配分は、共和党52に対して民主党が48だった。
今回の選挙結果により、議席配分が共和党51対民主党49に変化する。トランプ大統領が大統領就任後のメディアによる総攻撃をしのぐ、最大の防波堤になったのは、本年4月7日の最高裁人事の上院での承認だった。トランプ大統領が指名したニール・ゴーサッチ氏最高裁判事が上院で承認され、就任した。
この人事承認で最高裁判事の構成が共和党系5名、民主党系4名となり、トランプ大統領による入国規制措置などが合憲と判断されることになった。
上院における共和党優位がトランプ大統領の生命線になっている。

ロシアゲート疑惑はマイケル・フリン元大統領補佐官が起訴され、司法取引に応じたため、ロシアゲート疑惑がどこまで波及するのかに焦点が集まっている。

大統領弾劾は下院の過半数、上院の3分の2の賛成が必要でハードルは高い。
ロシアゲート疑惑での大統領弾劾は現実味を帯びていないが、大統領にとって上院の共和党多数は極めて重要である。上院の議員構成が51対49になったことで、共和党議員から2名の造反者が出れば大統領提案が通らないことになる。
トランプ大統領はアラバマ州の議席を死守するために一種のギャンブルに出たのだろうが、結果は裏目に出てしまった。
しかし、この選挙結果が今後のトランプ政権の軌道修正につながると見方も浮上している。

※続きは12月17日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1921回「2018年トランプ政権最大の懸念要因は何か」で。


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・植草一秀の『知られざる真実』

 

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