2024年04月24日( 水 )

民進党に残された70億円の持ち逃げ狙う残党

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 NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、民進党の分離・分割後も民進党に籍を置き無所属で選挙を戦った「残留した人たち」が、民進党に残された70億円もの政党交付金を狙っているとした、12月25日付の記事を紹介する。


衆議院の民進党は分離・分割された。紆余曲折はあったが、必然の流れによって分離・分割が実現した。分離・分割の基軸は「政策路線の相違」である。「誰が好き」とか「誰が嫌い」ではない。政策路線が根本的に異なる者が同じ政党で活動することに「矛盾」がある。不幸の原因は「矛盾」にあると言われる。民進党が極めて不幸な状態、凋落した状態にあった主因がこれだ。基本的な政策路線が定まらない。1つの政党のなかに、相反する基本政策路線を有する者が同居していた。これでは、主権者も支持しようがない。

主権者の多数が「安倍政治を許さない!」と判断し、この判断に基づいて政治活動をしている。民進党のなかに「安倍政治を許さない!」とする者がいるから、主権者の一部は民進党を支持してきた。しかし、民進党のなかに「安倍政治とともに進む」とする者がおり、この者たちが、「安倍政治を許さない!野党連合、野党共闘」を妨害してきた。こんな者がいるから民進党の人気が凋落し、この政党を支持する者が激減してきたのだ。しかも、この者たちが民進党の執行部に居座り、民進党の実権を握ってきた。そのため、大多数の主権者は民進党が「隠れ与党勢力」=「野党のふりをした与党」だと見なすようになったのだ。

その民進党がようやく分離・分割した。9月1日に代表選が実施されたが、この段階で分離・分割を実行していれば、10月の衆院総選挙結果はまったく異なるものになっただろう。枝野氏の判断を歓迎するが、タイミングが遅かった。民進党の分離・分割は必然である。なにしろ、戦争・原発・消費税という、主要三大国政課題についての基本スタンスが真逆である二つの勢力が一つの政党に同居していたのだ。2つに分離・分割されて、ようやくすっきりした。主権者国民もまともな対応をすることができる。

だが、衆院選に際して、立憲民主党が創設されて、この新党が多数議席を確保したことはよいが、希望に合流せずに無所属で選挙を戦いながら、民進党に籍を残しているという、極めて分かりにくい行動を示した者たちがいる。無所属で立候補したのに民進党に籍を残し、いま、さまざまに蠢(うごめ)いている。彼らが何に群がっているのかと言えば、民進党に残存している70億円の資金だ。しかし、この資金は彼らが汗水流して獲得した資金ではない。主権者国民が政治活動費として提供した国民資金である。

民進党の分離・分割は、主権者国民の目から見ても、正当性のある行動である。1つの政党に2つの異なる、相反する政策路線があったのでは、主権者国民はこの政党を支持しようがない。基本政策路線に沿って分離・分割してもらい、2つの異なる政党になってもらうことが、明らかに望ましい。その望ましい行動が取られた。野党の状況はとても分かり易くなりつつある。このことを踏まえれば、民進党は民進党を「分党」して、政党交付金残高について、議員数で案分して分離・分割するべきだ。それが、主権者国民が拠出している政党交付金の適正な処理方法である。

ところが、民進党に残留している者が、分党にも応じず、政党交付金の適正な分離・分割にも応じない構えを示している。参院民進党が分離・分割されるのは時間の問題で、すでに一部議員が民進党を離脱して立憲民主党に合流している。これに続く者が多数発生することは目に見えている。2019年夏の参院選を、いまの民進党で戦っても当選者を1人も出せないかも知れない。そこまで民進党は凋落しているのだ。民進党は希望系と立憲系に分離・分割されることは間違いない。

このとき、立憲系に移籍する者を放置し、やがて希望系だけが民進党に残ったら、残党は希望と合流することになる。その際に、民進党に残存する70億円を全額持ち去ろうと考えているのだ。公金横領と呼ぶほかない。希望と民進党残党が合流して1つの政党になる。70億円あれば、地方支部の立候補予定者に手当を支給できる。このことを目論んでいるために、「分党」を拒んでいるのだ。議員が民進党から離脱して立憲系に合流しても政党交付金を一切提供しない。離党者が出尽くしたところで残存する政党交付金を丸取りする。あさましい算段が持たれているのである。

民進党内で「分党」論議を大々的に行うべきだ。参院議員会長の小川敏夫氏が先頭に立って、「分党」を協議するべきだ。70億円は「隠れ与党系勢力」の力で得た資金ではない。民進党所属議員数に応じて、主権者国民が提供した資金なのである。主権者国民は、民進党が基本政策の相違を理由に分離・分割することを歓迎している。同時に、民進党を分離・分割する際には、政党交付金残高も適正に分離・分割するべきだと考えている。10月の衆院総選挙では、希望に合流した候補者に多額の資金が提供されたのではないか。立憲民主から出馬した候補者にも資金が提供されたのかどうか。

政治活動、政党活動に一定の資金が必要なことは誰もが理解しているだろう。そうであるなら、なぜ民進党に残留している者は、この資金を適正に分離・分割することを積極的に考えないのか。その行動がフェアーでない。新しい金権政治と呼ぶべきものである。

今後は、政党交付金制度を改正して、議員交付金とするべきだ。政党に交付するのではなく、議員に交付する。そして、政党議員の同意に基づいて政党が各議員からの拠出によってその議員交付金を政党活動に充当すればよい。主権者国民が提供した政党交付金を一部の議員が強奪、独占するような制度は直ちに改めるべきである。

※続きは12月25日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1928号「民進党分離分割完遂で明るい日本を創出」で。


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