2024年04月25日( 木 )

インバウンドは甘くない~「観光立国」の難しさ

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 今や押しも押されもせぬ国際観光都市となった福岡。博多港には連日1,000人規模のキャパシティを持つクルーズ船が接岸し、キャリーケースを引いた外国人観光客がラオックスやドン・キホーテに吸い込まれ、カートに山のような買い物を積み上げて満足気だ。飲食や小売など、さまざまな業種から「インバウンドで一儲けしたい」という声が上がっている。

 「でも、やっぱりそう甘くはありません」と話すのは、福岡市内で観光業に従事するA氏。彼の元には、インバウンドで一山……と夢見る人々から相談が寄せられているという。だが、そこから見えてきた実態は、なかなか厳しいものだった。

 ある男性は、インバウンド需要を狙って免税店を開いた。テレビや冷蔵庫などの高額商品を並べたが、いつのまにかインバウンドの客層が当初の富裕層からミドルクラスに変化。売れ筋が高額家電から炊飯器などに変わったため、利益を確保できず閉店を余儀なくされたという。
 ここ最近もA氏の元には「インバウンド客向けのショップやレストランを開きたい」という相談が寄せられるが、A氏は「とりあえず、今は様子を見たほうがいい」と判を押したような返事をしているという。

 「富裕層からミドルクラスに顧客層が変わったように、いつまたトレンドが変わるか予想はできません。今の売れ筋商品はもちろんありますが、それ一辺倒では急変に対応できないでしょう」。

ちょっと慎重すぎるような気もするが、ブームはいつか終わることを考えれば、用心に越したことはないのかも。基本的に「風頼み」のインバウンドで稼ぎ続けることを夢見るのは少々甘すぎる。最前線の状況は厳しいようだ。

 

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