2024年04月19日( 金 )

安倍政権のアジア外交の何が矛盾なのか

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 NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は平和の祭典である五輪の政治利用を指弾し、朝鮮半島の分断の原因がアメリカにあることを厳しく指摘した、1月20日付の記事を紹介する。


不幸の原因は矛盾にあるという。
3つの矛盾を示しておこう。

第一の矛盾は、五輪を「平和の祭典」としながら、この五輪を政争の具にしようとする矛盾。
隣国の韓国で冬季五輪が開催される。この五輪を契機に南北の融和が進展することは望ましいことである。日本も東京五輪開催を控えている。東京五輪を「平和の祭典」として成功させたいと考えるなら、韓国の冬季五輪に最大の協力をすることは友好国として当然の行動だろう。
その五輪開会式出席を政治的な理由で拒絶する姿勢に根本的な矛盾がある。

第二の矛盾は、核兵器を「抑止力」と位置付けておきながら、北朝鮮が主張する「抑止力」を無視することである。
そもそも、核兵器は廃絶するべきものである。
日本は核兵器禁止条約を批准するべきであるが、日本政府は核兵器禁止条約に背を向けている。核兵器は「抑止力」で、この「抑止力」が機能することのより平和を維持できる。
これが核兵器を正当化する「抑止力」の論理である。
北朝鮮が核装備に突き進んでいる理由は、米国を侵略するためではなく、米国からの軍事侵攻に対する「抑止力」を確保するためと考えられる。
この意味では、同じ「抑止力」であり、米国の核保有は正当で北朝鮮の核保有は正当でないという主張は、「差別」構造そのものである。

第三の矛盾は、南北の対話、融和に対して、米国が北朝鮮への軍事オプション行使という「煽り」を行っていることだ。
大韓民国(韓国)と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の会談で平昌五輪への合同参加が合意されたときに、米国はカナダのバンクーバーで北朝鮮への「圧力強化」を確認するための「20ヵ国外相会合」をバンクーバーで開催した。
対話と融和の進展を期待し、見守るべきところ、米国は日本を隷属させて北朝鮮に対する挑発を繰り返している。北朝鮮と米国の挑発合戦が偶発的に戦乱につながることを何よりも警戒する必要があるが、冷静な対応ではない、挑発的な行動が展開されることは望ましいことではない。

北朝鮮と韓国は同じ民族が分断されるという悲劇の主人公である。「アリの一言」ブログ氏が、朝鮮が南北に分断された背景について、奈良女子大名誉教授中塚明氏とオーストラリア国立大教授ガバン・マコーマック氏の指摘を紹介されている。

以下に転載する。
「一九四五年八月十五日、日本が敗北するとすぐさま朝鮮建国準備委員会(委員長・呂運亨)が結成され、八月末まで朝鮮全国各地に一四五もの人民委員会がつくられる勢いでした。九月六日には、朝鮮人民共和国の樹立が宣言されました。首席にアメリカで活動していた李承晩、副首相に呂運亨という布陣で、幅ひろい組織をめざしました。
しかし、アメリカは南朝鮮に軍政を施行し、朝鮮人民共和国を認めず、きびしく弾圧しました。
…朝鮮人自身による独立政府樹立の運動が続く中…
アメリカは、一九四七年、創設まもない国連に朝鮮問題を持ち込み、国連監視下の南北朝鮮の総選挙を可決、翌年には南朝鮮だけの単独選挙実施方針を示しました」(中塚明奈良女子大名誉教授『日本と韓国・朝鮮の歴史』高文研)

「そもそも朝鮮の分断は、アメリカの一方的決定によるものであった。
…終戦直後の一九四五年九月、朝鮮に上陸し、朝鮮南部に軍事的支配を樹立したアメリカは、すでにその行政区域内に育っていた朝鮮人自身の萌芽的共和国(呂運亨主導下の朝鮮人民共和国)とその草の根の組織である人民委員会の承認を拒否した。……日本の植民地体制と植民地統治が崩壊し、代わりにアメリカ支配が始まってから、莫大な富と権力がアメリカ人の手に渡った」(ガバン・マコーマック・オーストラリア国立大教授『侵略の舞台裏 朝鮮戦争の真実』影書房)

米国が朝鮮を南北に分断し、韓国を支配下に置いてきた。米国にとって日本と韓国は軍事戦略上、極めて重要な位置を占めている。米国の利益のため、米国の都合のために朝鮮半島の南側が米国に支配され続けてきたのである。
韓国の文在寅大統領の両親は北朝鮮の出身者であるとされる。文在寅大統領は南北朝鮮の統一を目指しているのだと考えられる。

※続きは1月20日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1949「安倍政権のアジア外交の何が矛盾なのか」で。


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・植草一秀の『知られざる真実』

 

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