2024年04月23日( 火 )

現代建築を支える「鐵」・スクラップ 福岡から世界へと広がる販売網

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(株)竹田商会

 スクラップ回収業者として、1964年8月に個人創業した(株)竹田商会。創業当初は代表自らオート三輪1台で鉄工所の製品などの資材運搬を手がけた。それから50余年が経った現在、同社はスクラップと鋼材販売の2つの事業を柱に、100億円を超える売上高を計上する福岡屈指の鉄鋼販売業者としての地位を確立。その販売網は世界へと広がっている。

(聞き手:弊社代表・児玉 直)

鐵をめぐる環境変化

 ――現在、建設業界は活況を呈しています。建築物の屋台骨である鐵をめぐる環境はどうでしょうか?

 竹田 おかげさまで業績は向上しているのですが、人材の確保がうまく進みません。たとえば、鋼材の運送は宅配便のような普通の貨物とは違い、鐵の製品を持ち運びすることになります。重労働になりますので、当然それに見合った待遇を求職者は求めます。経験豊富な方からの引き合いはあるのですが、若手―とくに新卒の獲得が思うように進みません。

 即戦力となる経験者も、より条件の良いところへ行くことが多いため、結果として運送用のトラックがフル稼働できるという状況は希になってきているようです。これは業界共通の課題といえるでしょう。

 また、鋼材の使用量が多い自動車ですが、自動車の軽量化は今後ますます進んでいくことが予想されます。ドイツの世界的自動車メーカー、フォルクスワーゲンは2030年までに全300種類におよぶモデルのすべてを電気自動車にすると発表しています。自動化が進むなかでセンサーによる自動制御が確立されれば、確実に鐵に対する需要は落ち込みます。私個人の見解としては、鐵に代わってプラスチックやアルミ、あるいはそれ以上に軽い新資材が自動車の構成素材として主流になっていくのではないかと考えています。まだ先の話にはなりますが、今から対応を考えておく必要があります。

 ――鐵の市場価格は落ち込んでいくのでしょうか。

 竹田 自動車における鐵の使用量が減っていくことは間違いないでしょうが、市場価格については正直「読めない」というのが本音です。中国の地条鋼(ちじょうこう)をご存じでしょうか。鐵・スクラップを中周波誘導電気炉と呼ばれる電炉で溶かして製造した、成分や品質の安定しない、粗悪な鋼材のことです。

 たとえば地条鋼の鉄筋は曲げるとポキッと折れてしまいます。これではお話にならないということで、中国は国策として地条鋼を市場から排除しています。中国では鐵・スクラップの輸出には40%の高率の輸出関税がかけられていましたが、2018年1月よりこれが一部撤廃されます。地条鋼の排除で相応の品質が保証された鋼材が市場に出回ることになると思われます。鋼材相場にも波が出てくるのではないでしょうか。

 技術革新や世界経済の影響下、鐵をめぐる環境は厳しさを増していますが、鐵は現代社会における必需品です。鐵ほど強くて、安くて、加工しやすいものはないのですから、決してなくなることはないでしょう。

好調続くスクラップ事業

 ――スクラップ事業の状況はいかがでしょうか。

 竹田 現在、売上高の構成比率はおおよそスクラップ事業6割、鋼材事業4割です。福岡を中心に、九州一円でお取引させていただいております。

 スクラップは貴重な金属原料ということもあり、需要は国内だけにとどまりません。スクラップに対する需要は海外市況でも上向いてきており、弊社では現在スクラップの輸出も手がけています。箱崎ふ頭より、集約したスクラップを韓国・ベトナム・台湾などのアジア諸国へ船舶輸送しています。とくに台湾への輸出が好調です。船なら一度に3,000tのスクラップを積載可能です。トラックであれば約300台分の量に値します。このスケールメリットをもっと生かして、今後も海外市場への輸出には力を入れていきたいと考えております。

売上高100億円突破

 ――業績はいかがですか。

 竹田 前期は約83億円の売上高を計上し、当期は約115億円の売上高を計上しました。増収の要因は鋼材商品の価格上昇(前期比約25%)、製品量の増加(同比約15%)にあったと考えています。おかげさまで利益も税引前利益で3億円を超える予定です。

 ――増収増益もはたし、収益基盤は磐石といえます。

 竹田 おかげさまで業績は上向きで堅調に推移していっております。収益基盤もより堅固なものとなり、取引に際しては、福岡銀行さんには大変ご支援いただき、今日に至っております。

 ――福岡屈指の鋼材業者としての地位も確立されました。今後の目標は?

 竹田 心強い後継者も育ってきていますので、バトンタッチするその時までは、健康の維持に努め、可能な限り長く人と関わり続けたいと考えています。現在、私は福岡鉄鋼販売業組合の理事長も務めています。

 福岡県でいえば、北九州の鉄鋼業者は非常に元気がよく、福岡市内で事業所を構えられているところもあります。いわゆる3Kのイメージを持たれる方も少なくないでしょうが、活力ある企業が目立っている業界でもあり、若い方にもまずは興味をもっていただけるように、福岡県下の鉄鋼業者と緊密に意志疎通を図り、また、他の関係諸機関と連携して鉄鋼業界の安定と発展、そして、鉄鋼業の経済的地位の向上を図ることを目的に活動してまいります。

 ――70歳を超えてなお衰えることない活力。御社と鉄鋼業界の未来が非常に楽しみになります。

【代 源太朗】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:竹田 奉正
所在地:福岡市博多区上牟田1-17-21
設 立:1980年12月
資本金:3,000万円
TEL:092-432-0088
URL:http://www.takeda-shokai.com

<プロフィール>
竹田 奉正(たけだ・ほうせい)
1964年8月、個人創業。80年12月、(株)竹田商会設立、同社代表取締役に就任。趣味はゴルフ、読書。福岡鉄鋼販売業組合理事長、九州産業大学付属九州高等学校監事、九州産業大学硬式野球部名誉会長、(株)日本政策金融公庫・福岡懇話会代表幹事を務める。

 

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