2024年03月29日( 金 )

究極の売国協定TPP&日欧EPA驚愕の断面

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、「アメリカ抜き」で進行しているTPPの現状と、それがもたらす惨禍について厳しく指弾した2月9日付の記事を紹介する。


一昨日の2月7日、「TPPプラスを許さない!全国共同行動」が主催する「TPPプラス交渉をただす!院内集会」が参議院議員会館で開催された。

野党国会議員が6名参加し、会場に入りきれないほどの市民が参集し、密度の濃い集会が開催された。今回の集会は、TPP11ならびに日欧EPA妥結を受けて、「TPPプラスを許さない!全国共同行動」が事前に質問事項を政府に投げかけ、政府の担当部局の職員が回答を示すという形態で実施された。
政府からは内閣官房、外務省、農水省から13名の職員が出席した。

集会は14時から17時まで開かれ、14時から15時までは、政府に投げかけた質問事項を参加者に説明することと、国会議員からの発言時間に充当された。15時から17時の2時間を活用して、政府からの回答と、その回答に対する再質問および再回答が実施された。
政府側の説明で冒頭、内閣官房TPPなど政府対策本部からTPP11が3月8日にチリにおいて署名式を行うことで各国が準備を開始することで合意したことが報告された。

続いて外務省から日欧EPAの交渉妥結について報告があった。
そのうえで、内閣官房TPPなど政府対策本部から日欧EPAなどの経済効果分析について説明があり、さらに、農水省からTPP11および日欧EPAによる日本の農林水産物生産額への影響試算についての説明が行われた。

全国共同行動が用意した質問事項は、
1.TPP11の合意に関する懸念事項
2.日欧EPAにおける「食の安全」に関する懸念事項
3.政府の「影響試算」と「政策大綱」に関する疑問点
4.日欧FPAにおける「国有企業」「公共調達」などに関する疑問点
の4つのカテゴリーに分類して提示された。
これらの4つのカテゴリーのうち、第4のカテゴリーについては説明時間がなくなり、次回への積み残しとなった。

第1の「TPP11の合意に関する懸念事項」として、TPP11の新協定第6条の問題点が取り上げられた。協定第6条とは「TPP原協定の発効が見込まれる場合または見込まれない場合に、いずれかの締約国の要請があった時は、TPP11協定の改正などを考慮するため、この協定の見直しを行う」というものである。

「TPPに反対する人々の運動」世話人の近藤康男氏が指摘したように、当初のTPP協定の決定を維持してしまうと、米国が離脱することによって日本への参加国および米国から輸入が増大し、日本の農林水産業が受ける影響がより甚大になる懸念がある。

どういうことか。
1つの例として牛肉の輸入を考えてみる。TPPでは輸入急増時のセーフガード発動の要件を定めた。TPPでは参加国からの輸入量が発効時点では年間59万トン、16年目には73.8万トンを超えるとセーフガードを発効できるとしている。

たとえば発効時にオーストラリアと米国からそれぞれ30万トンの輸入が行われたとすると、合計輸入量が60万トンとなり、セーフガードを発効できる。
しかし、TPPから米国が離脱したため、60万トンというセーフガードの発効条件は意味をなさなくなる。オーストラリアから50万トンの輸入が行われ、これとは別にTPPの枠外で米国から30万トンの輸入が行われれば、輸入量は80万トンになるのにセーフガードを発効できなくなる。

当然のことながら、日本はこうした取り決めの「凍結」を求めなければならなかった。
しかし、日本は凍結を求めず、TPPの決定事項をそのまま受け入れた。これに対して農林水産事業者から懸念が表明され、それが協定第6条に反映されたのだが、この条文が意味を持たないことは明白である。
協定第6条の表現はわかりにくいが、要するに、米国がTPPに入らない場合に「TPP11協定の改正などを考慮するため、この協定の見直しを行う」という「気休めの文言」が示されただけに過ぎない。
日本に対する輸出を拡大しようとする参加国が、日本が譲歩した水準を緩和する協定見直しに合意するわけがないのである。
全国共同行動を指揮している山田正彦元農林水産大臣が、政府の木で鼻をくくったような説明に対して、厳しい批判を示したのは当然のことである。

※続きは2月9日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1965回「究極の売国協定TPP&日欧EPA驚愕の断面」で。


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・植草一秀の『知られざる真実』

 

 

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