2024年04月17日( 水 )

LGBT当事者団体も歓迎の声~福岡市が「パートナーシップ宣誓制度」を導入へ

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福岡レインボーパレードの様子

 福岡市が来年度、同性カップルやトランスジェンダー(心と身体の性別が一致しない人)のカップルをパートナーとして公的に認証する、「パートナーシップ宣誓制度」を導入する方針を固めた。この方針について、当事者からは歓迎の声があがっている。

 「パートナーシップ宣誓制度」は、LGBT(※)などの性的少数者を対象に、人生をともに生きる決意のもとで共同生活を営むカップルをパートナーとして公的に認証するもの。対象となる当事者の範囲や要件などの詳細については、運用開始まで引き続き検討を続ける。
 同制度は、国内では2015年の東京都世田谷区と同渋谷区が最初の例で、現在は全国で6自治体が導入している。
 福岡市が運用を開始すれば県内初で、政令指定市では札幌市についで2番目、九州・沖縄では那覇市に次ぐ導入となる。婚姻届で生じるような法的権利義務、拘束力はないが、保険業など一部の企業では、同制度による宣誓書を公的文書に準ずるものとして扱う動きも広がっている。EU加盟国では、同性愛者や同性カップルに対する差別が条約で禁じられているため、1990年代から同性パートナー制度を設ける動きがあり、現在では同制度に基づく関係をほぼ婚姻と同様に扱う国もある。

 福岡市の方針について、福岡市を拠点に性的少数者の情報発信・啓発活動に取り組むNPO法人「Rainbow Soup」代表の五十嵐ゆりさん(44)は、「これがゴールではないが、市としてかたちにしてくれたのは素直にうれしい」と歓迎する。
 「かねてから、高島(宗一郎)市長が性的少数者の権利擁護に積極的なのは報道などで感じていました。昨年11月13日に当事者団体の要望書を渡す際も、市議会議長とともにご本人が時間を割いて受け取ってくださったので、何らかの具体的な動きがあるという手ごたえはありました」(五十嵐さん)
 五十嵐さんは、宣誓制度がスタートすることで劇的な変化が生まれることはないものの、生活者レベルで利便性が増す可能性を指摘する。
 「たとえば公的病院や公営住宅において、過去には同性カップルが家族扱いされなかったケースもありました。宣誓制度に法的拘束力はありませんが、今後、こういったケースで家族と認められることがあるかもしれません。また、行政がこういった方向性を示したことで、民間企業も同様の判断を示すことも増えるでしょう。具体的には、カップルむけのサービスであったり、パートナー同士でローンを組んだり財産を共有するなど、家族と認められることの意味は意外に大きいのです」(同)
 九州レインボーパレードなどLGBTが主役となるイベントには当事者以外の参加者も増えており、五十嵐さんは同性カップルを受け入れる空気が広まっているのを「肌感覚で」感じているという。

 性のありかたやカップルのかたちは一様ではない。今回の福岡市の方針決定は県内や九州の他自治体へも影響をおよぼすとみられ、性的少数者がより安心して生活できる社会を構築するという意味でも評価すべき決断だ。福岡市で同制度を担当する人権推進課によると、「パートナーシップ宣誓制度」は19年度当初からの運用を目指しているという。

※LGBT=女性同性愛者(Lesbian)、男性同性愛者(Gay)、両性愛者(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)の略語

 

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