2024年04月20日( 土 )

パートの無期雇用転換はジョイフルのイメージ戦略か

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 外食チェーン大手のジョイフル(本社所在地:大分市)が13日、パートタイムやアルバイト従業員との労働契約について、原則1年ごとの有期雇用から無期雇用に転換することを決めた。今回の決定で、現・パートタイム・アルバイト従業員1万6,929人が4月1日付で無期労働契約に切り替わり、1日以降に入社するパートタイム・アルバイト従業員についても無期雇用契約を交わす。ジョイフルは決定の理由について「パートタイム・アルバイト従業員に継続的に安定して働いてもらうため」とするが、背景にあるのは外食業界を悩ませる慢性的な人手不足だ。
 さらに、労働契約法が改正されたことも今回の決定を後押ししたことは間違いない。今年4月1日以降、有期雇用契約を更新し続けて5年を越えた者について、無期雇用への転換を申し込むことができるようになる。早い時期に法改正への対応をみせたことで、「働きやすさ」をアピールするねらいもあるとみられる。

 ジョイフルの決定について、他外食チェーン店の受け止め方はさまざまだ。長く外食チェーン店を取材してきた経済誌記者は、「他外食チェーンは冷ややかに見ているのでは」と語る。
 「ジョイフルは、外食業界のなかでも早くに24時間営業の見直しに取り組んだ企業ですが、実は利益を出すための企業側の都合という側面もあり、実際に決算では良い数字を出していました」
 さらに、「個人的な見解」としつつ、外食産業に従事する働き手の「特殊な事情」から、無期雇用への転換に疑問符をつける。
 「私の知る限り、パート労働でずっとファミリーレストランで働きたいと願う方はほとんどいません。パート労働を続けることで、いずれは正社員に登用されて店舗マネジメントを経験できるとか、商品開発部門や管理部門への配置転換があるという未来があるのなら今回の決定は理解できますが、現状ではあまり意味がないのでは。うがった見方をすれば、イメージアップ戦略とも受け取れます」

 外食産業は長く、学生や主婦などが隙間時間をうまく使うことのできるアルバイトとして重宝してきた。企業側からみれば、ある程度ルーティン化された作業を正社員に担わせる必要はなく、経費負担を減らしながら現場を維持する使い勝手の良い労働力として、お互いに「Win-Win」の関係を築いてきたともいえる。しかし、少子化に伴って学生数が減ったことや、現代的な背景としてSNSやネットメディアが発達したことで、より割の良いアルバイト情報が流通するようになっている。主婦層もその事情は同じで、外食産業は積極的に選択する職場でなくなっているのは否めない。
 某外食チェーン店でアルバイト経験者が語る実情は生々しい。「厨房は体力的に非常にきついうえに、フロア業務も立ちっぱなしで負担が大きい。自分から『ずっとここで働きたい』と望む人なんているんでしょうか」。

 人手不足解消の根本策が見えないなかで、他外食チェーンがジョイフルの決定に続くのか、動向が注目される。

 

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