2024年04月20日( 土 )

鵜呑みにできない?予備校の「合格実績」~医学部人気の裏で

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 今年の受験シーズンも終盤、惜しくも涙を飲んだ受験生のなかには、複数の予備校パンフレットを前にして途方にくれている者もいるだろう。大学全入時代といわれて久しく、定員割れとなる大学も珍しくなくなったが、「医学部」となると話は別。いまでも2浪、3浪する受験生も珍しくない。そんな状況を反映して、医学部予備校、とくに私立に照準を合わせた予備校は増加傾向で推移している。

 受験生が予備校に求めるものは「合格」の二文字のみ。したがって、予備校選びの基準はおのずと合格実績に重点が置かれることになる。ただし、この「合格実績」なる数字はさまざまなバイアスがかかっていることが多く、ウブな受験生が一人で読み解くにはいささか難しい「高等数学」だ。
 まず、予備校によって、「合格実績」の定義がさまざまなのだ。私立医学部の合格実績には、推薦合格、一次試験合格、二次試験合格、補欠合格がある。なかでも、推薦合格は高校ごとに割り振られた推薦枠の存在も大きく、予備校の指導力を計るには少々心もとない。

 一次試験合格は学科試験のみの合格を意味し、それをもって直ちに医学部に進学できるものではない。受験生が参考にすべきは二次試験合格者数で、真に予備校の実力を計るための指標は、二次試験合格者数を指すといってよい(補欠合格は正規合格者が辞退したことで繰り上がって合格すること)。

 今年度の実績は出そろっていないため、昨年度の実績をもとに、福岡で影響力のある予備校を比較してみよう。東京以西で6校舎を展開する富士学院は、「医学部医学科最終合格者207名」と、推薦合格は含むものの一次・補欠は含まず、単年の医学部の正規合格者数を記載。別途、歯学部、薬学部の実績がそれぞれ記載されている。

 1校舎のみ運営する太宰府アカデミーは、最も目立つところに「合格実績 累計307名(2006年度~17年度)」とあるが、各年の実績を見ることもできる。昨年実績は、「私立医学部:正規合格24名(推薦含む)、1次合格41名(推薦含む)、私立歯・薬・他学部11名」。推薦合格を含み、歯学部、薬学部だけでなく1次合格者数や他学部の合格者数も並べられているが、医学部の正規合格者は独立したかたちで見ることができる。

 全国に25校舎(うち2校舎は今年開設)を展開し、業界最大手とされるメディカルラボは、「医系専門予備校 合格者数NO.1」「2017年度合格実績 802名」とし、内訳として各大学名とその合格者数が記載されている。さらに、医学部内に保健学科等を置く大学があることを念頭に置いてか、すべて医学科であることや、イベント参加者や実力判定テストの受験者は含まれないことが注記される。推薦合格や一次合格については記載がないが、「推薦合格も含んでいるが、一次合格は含まない」(メディカルラボ)という。
 また、各大学の合格者数を合計しても802名には届かないことについては、「残り120名は他大学の医学部および歯学部の実績」(同)といい、医学部だけの正規合格実績はこれだけみてもわからないようになっている。

 合格実績が予備校選びの重要なポイントであるにも関わらず、医学部の正規合格だけではない数字が含まれることは少なくない。また、これまでの累積合格者数のみを表示する予備校も数多く存在し、合格実績で予備校を比較することは難しいのが現状だ。
 予備校選びをする際は、「医学部医学科」の「単年」の「正規合格」について直接問い合わせるなどして、納得のいくまで予備校の「合格力」を計るべきだ。来年の栄冠に向けた第一歩として、「読解力」を磨くいい経験になるだろう。

 

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