2024年04月26日( 金 )

米朝首脳会談合意の裏で進むトランプ大統領と金正恩委員長の利権交渉(後)

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、2018年3月23日付の記事を紹介する。


 要は、アメリカも北朝鮮も本音では戦争を望んでいないのである。では、「戦争も辞さない」とする過激な発言を双方が繰り返した背景は何なのか。この点を抑えておかなければ、米朝関係の表面的な対立志向に翻弄されるだけで終わってしまう。今こそ、北朝鮮の核ミサイル開発によって一番得をしているのは誰か、ということを冷静に判断する必要がある。

 もちろん、最も得をしているのは北朝鮮だ。アメリカへの抑止力を確保したうえで、韓国や中国に対しても強い立場で交渉できるカードを手に入れたといえるからだ。北朝鮮のミサイルの脅威に対応するためアメリカは韓国にTHAADと呼ばれる高高度の迎撃ミサイルシステムを配備したが、一連の米朝間の応酬を経て、さらに追加配備が計画されることになった。この迎撃ミサイルシステムは北朝鮮のミサイルにはまったく無力であることは軍事関係者の間では周知の事実であるにもかかわらずである。

 では、なぜ配備が進んでいるかといえば、中国国内の軍事的動きを把握する強力なレーダー機能があるうえに、中国からのミサイルを打ち落とすことが可能となるからだ。アメリカは北朝鮮ではなく、中国の将来的な脅威に対応する目的でTHAADの配備を進めているわけだ。しかし、表向きは「狂気の金正恩が何をするか分からないため」と、北朝鮮をTHAAD配備の言い訳に利用してきたに過ぎない。もちろん、アメリカの軍需産業にとっては実においしい話であり、トランプ政権万々歳である。

 しかも、注目すべきはTHAADの韓国内配備は北朝鮮にもメリットが大きい点だ。なぜならTHAADの配備は中国にとっては、かつてない脅威となっているからだ。そのため、配備を容認し、追加配備にも前向きな韓国に対し、中国政府は猛反発。そのあおりを食って、中国内の韓国企業は次々と撤退を余儀なくされるようになった。また、韓国を訪問する中国人観光客は激減。中国と韓国の経済通商関係は悪化の一途である。韓国経済にとっては深刻な事態といえよう。

 結果的に中国との関係が冷え込む韓国は北朝鮮との関係改善に活路を見出さざるを得ない状況に追い込まれてしまった。これこそ、金正恩が大陸間弾道弾(ICBM)の開発によりアメリカを脅し、韓国へのTHAAD配備を進めさせた理由である。その狙いは中国を韓国、アメリカから引き離すことにほかならない。そうすれば、中国は否応なく、北朝鮮を支援することになるはずだ。

 こうした深慮遠謀を企てているのが金正恩なのである。決して一部のメディアが伝えるような「狂人」とか「3代目のボンボン」ではないだろう。それどころか、アメリカの大統領をも手玉に取る「天才」といっても過言ではないかもしれない。そうした背景を日本もアメリカも理解しようとしてこなかった。

 しかし、利権ビジネスに敏いトランプ大統領は「金正恩とディールできる」と確信したようである。その結果、5月には首脳会談が開催されることになったわけだ。現職のアメリカ大統領と北朝鮮の最高指導者が直接会うのは初めてのこと。もちろん、前言撤回の常習犯ともいわれるトランプ大統領である。突然、会談をキャンセルし、先制攻撃という選択肢に切り替える可能性は否定できない。その点は、要注意である。

 いうまでもなく、金正恩は世界の国家指導者のなかで最年少である。とはいえ、その生年月日ははっきりしない。しかし、年齢や生年月日がはっきりしないのは金正恩だけではない。国家の政策として北朝鮮では自国の最高指導者の生年月日を極秘扱いしてきているのである。神秘のベールで覆うことで、まさに神格化を進めようとの意思が感じられる。

 幼いころから皇帝のような特殊な環境で育てられたため、自らがリスクを取ることには躊躇をしないという性格が身についているようだ。国家の最高指導者に就任してからも核開発やミサイルの発射実験など世界の批判を浴びながらも一向に動じる気配を見せてこなかった。韓国始め、中国、ロシアといった周辺国やアメリカ、イギリスの支援を得ることで、豊富な地下資源を開発することに成功すれば、北朝鮮は急成長することが期待される。

※続きは3月23日のメルマガ版「米朝首脳会談合意の裏で進むトランプ大統領と金正恩委員長の利権交渉(後編)」で。


著者:浜田和幸
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