2024年03月29日( 金 )

【中国の闇】臓器移植の実態~「史上最悪の大虐殺」との指摘も

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臓器供給源の謎

デービッド・マタス氏(左)

 中国で行われている臓器移植の不可解な実態についての調査結果を報告するドキュメント映画「ヒューマン・ハーベスト」の上映会が7日、福岡市内で開催された。上映会には、12年かけて同調査を実施し、2010年のノーベル平和賞候補となったカナダの国際人権弁護士デービッド・マタス氏が参加した。

 ユダヤ人のマタス氏は、ナチスドイツによる大虐殺の教訓から、「迫害のなかにいる人が声をあげられない問題だからこそ、外の人間が立ち上がらなければならない」とし、「中国への移植ツーリズムに日本が加担しないように変えることはできる」と訴えた。

 マタス氏の調査は、実際に中国で臓器移植を受けた元患者や、臓器の供給源とされていた元囚人、医療機関への電話によるおとり調査、中国発表資料などをもとに行われた。

 複数の元患者は、中国到着後、数日から数週間という短い期間で臓器が手配され、手術が行われたと証言。中国では、腎・肝移植の待ち時間は通常、数週間と見積もられており、それを実現するためには、膨大な数のドナー登録が必要となる。

中国の臓器移植をイメージしたつぎはぎのパンダ

 臓器の供給源に対する疑問に、中国は「死刑囚」と答えていた。しかし、中国の死刑者数は2000年で約1万人とみられており、同年以降、減少したとされている。中国が公表した移植件数は約1万件。数週間の待ち時間で行われる移植手術とその臓器供給源の数が「1対1」というのはあり得ない。

 調査では、中国政府から認定された移植病院の数(169軒)や病床数など設備のデータから、実際には、公表数の数倍におよぶ臓器移植が行われていると指摘されており、1万人の死刑囚では到底追い付かない。

 証言やおとり調査から、臓器供給源の多くが、中国の気功「法輪功」の学習者である可能性が高まったという。「法輪功」は、1999年7月、当時の最高指導者・江沢民により「邪教」に指定され、弾圧が始まった。当時の学習者の数は7,000万人ともいわれている。

 さらに、臓器の供給源は、「法輪功」の学習者だけではなく、ウイグル人などの少数民族、政府非公認の宗教の信者にもおよぶという。マタス氏は「中国の医療制度は、臓器移植による収益に依存しており、いまのやり方を変えることは医療制度の崩壊につながりかねない」とし、今後も「人類史上最悪の大虐殺」が続く可能性を指摘する。

 「中国を変えることは困難だが、日本が加担しないように変えることはできる」(マタス氏)。本上映会を主催したSMGネットワーク(中国における臓器移植を考える会)では、今後も中国の臓器移植に関する情報発信を行うほか、臓器元が不明の移植を禁止するといった法整備を求める活動を続けていくとしている。

【山下 康太】

▼関連リンク
・SMGネットワーク(中国における臓器移植を考える会)

 

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