2024年03月28日( 木 )

新局面を迎えた中国の「一帯一路」経済圏構想(前編)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、2018年6月22日付の記事を紹介する。


 今から5年前、ナザルバエフ大学にて習近平国家主席によって発表された中国の「一帯一路」経済圏構想が新たな局面を迎えている。去る5月の李克強首相の来日に際し、安倍首相は北海道まで同行した。その理由は、中国が朝鮮半島や北海道も「一帯一路」計画に組み込む方針を固めたからにほかならない。

 実は、世界の注目を集めている「一帯一路」構想はアジアとヨーロッパを結ぶ「現代版シルクロード」と呼ばれ、大きなビジネスチャンスを秘めているため、日本企業も参加の道を模索している。そのため、安倍首相は自ら李首相を案内しながら、中国の狙いを見極め、日中協力案件の可能性を探ろうとしたのである。

 構想の提案からわずか5年しか経っていないが、100カ国余りが参加あるいは支持を表明するほど浸透が加速している。というのも、世界のパワーバランスが大きく変貌を遂げる中、「世界の警察官」を豪語したアメリカが国際舞台から徐々に距離を置く一方、中国による国際的な影響力の拡大が目覚ましいからである。

 その象徴的な動きが「一帯一路計画」というわけだ。中国には「要想富、先修路」ということわざがある。「豊かになりたければ、先ず道路を整備せよ」という意味である。インフラ整備を通じて、自国内に限らず、世界に覇を唱えようとする「中国の夢」とも合致する。これまでのアメリカ主導の国際秩序やグローバルガバナンスのあり方を中国式に塗り替えようとする大胆な試みにほかならない。まさに、毛沢東、鄧小平と並び、習近平が中国の現代史の主役として君臨するための舞台装置である。

 その背景には1970年代までの貧しい国を改革開放政策によって、わずか30年でアメリカと肩を並べる世界第2の経済大国の座を射止めたという自信が感じられる。世界経済全体の15%を占め、その成長率への貢献度で測れば、世界最大の30%を超えるまでになった中国。いわば、世界経済は中国抜きには語れない時代になったといっても過言ではないだろう。

 何しろ、この「一帯一路」計画の沿線に位置する65カ国の人口は世界全体の60%を上回る。とはいえ、これら沿線国の経済規模は世界の30%ほど。この人口と経済規模の非対称性を解消することにも、習近平政権は欠かせない歴史的使命と意義を見出そうとしているようだ。
 
 そこで、習近平主席は2017年1月、スイスの国連ジュネーブ事務局を訪問した機会に「一帯一路は特色ある経済圏と新型国際関係の構築、新時代に相応しい公平で客観的なグローバルガバナンスの形成、さらには、中国が希求する人類運命共同体の構築へのプラットフォームにしたい」と語ったのである。しかも、その成功のカギを握るのは「国家間交流におけるパートナーシップの構築である」と声を大きくした。これこそ、習近平中国の新たな外交戦略の要となる発想といえるもの。

※続きは6月22日のメルマガ版「新局面を迎えた中国の『一帯一路』経済圏構想(前編)」で。


著者:浜田和幸
【Blog】http://ameblo.jp/hamada-kazuyuki
【Homepage】http://www.hamadakazuyuki.com
【Facebook】https://www.facebook.com/Dr.hamadakazuyuki
【Twitter】https://twitter.com/hamada_kazuyuki

 
(後)

関連記事