2024年04月19日( 金 )

外国人技能実習生 安価な労働力か、貴重な人材か(前)

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 日本でも外国人技能実習生の受け入れを検討する企業は少なくない。すでに受け入れているところもあるだろう。だが企業側は、彼らのことをどう見ているのだろうか。一時期、ニュースなどで騒がれたように、単なる安価な労働力なのか、それとも貴重な人材なのか――。

外国人と日本人の垣根はない

ベトナムでの実習風景

 外国人技能実習生を受け入れている建設業者(以下、A社)は、受け入れを開始した理由を次のように話す。「日本人を育てる余裕がなくなってしまいました」(A社代表)。
 ここで言及される“余裕”とは、費用・気質に対するものだ。費用とはもちろん人件費。建設業界では、人手不足を背景に人件費が高騰を続け、仕事を受けたくても人を雇えず受注を見送るという業者も少なくない。

 そしてもう1つの気質とは、日本の若者に対する印象だ。
 「全員がそうだとは言いませんが、仕事がきつかったり、注意を受けると、日本人の若者はすぐに辞めてしまう傾向にあると感じています。採用に際しては、必要書類の作成や社内的な教育体制の整備など、相応の時間を割きます。そこまでしてすぐに辞められてしまっては、雇用する側としては正直うんざりしてしまいます」(A社代表)。

真剣な表情で仕事に臨む実習生たち

 では、実際に技能実習生を雇用してみた感想はどうだろうか。
 「ベトナム出身の6名(1期生3名、2期生3名)に頑張ってもらっています。非常によく働いてくれており、取引先からの評判も上々です。1期生は実習期間3年が経過しましたが、全員2年の延長を申し出てくれました」(A社代表)。
 技能実習生は、型枠の建て込みなども手がけているという。仕事内容は、当人たちの成長度合いに合わせて幅が広がっていく。ここに面白味を感じることができれば、自然と定着率も向上していくだろう。

 では、賃金を筆頭に、待遇面はどうだろうか。
 「実は、昔と違って今では、人件費はもう日本人と変わらない水準になっています。そのほかの待遇も同じです。現場までの交通費の支給や住居の世話も、日本人のそれと同じように対応しています。弊社では、辞めるときには退職金も手渡しています。母国に帰ったとき、彼らは弊社での経験を口コミやSNSで正直に伝えてくれます。その結果として、弊社で働きたいと手を挙げてくれる技能実習生が途切れることはありません。日本人と遜色ない雇用環境の提供が、持続的な人材確保につながっているのです」(A社代表)。

すべては企業側の態度次第

 日本で働きたい外国人技能実習生と、技能実習生の受け入れを検討している企業との間を取り持つB社は、「技能実習生を生かすも殺すも、受け入れ企業次第だ」と話す。
 「弊社では、年間30~40人の技能実習生と企業を結び付けています。技能実習生1人ひとりに、日本を好きになってもらえるように、受け入れ企業の調査は厳しく行っています。技能実習法や入管法など、関連法案を遵守できる企業か。長時間労働が発生した際に、残業代の支払いを行うのか。半年以上雇用した場合に、有給の付与があるのか、など。技能実習生を都合の良い労働力として扱えば、最悪の場合、裁判に発展します。10社面接して、弊社が求める基準を満たす企業は多くても2社です。そこまで徹底するからこそ、技能実習生も企業も安心して雇用関係を結ぶことができます」(B社代表)。
 B社によれば、技能実習法などの関連法律に従って技能実習生を受け入れた場合、その賃金は日本人のそれを上回る場合もあるという。費用面に着目すると、もう技能実習生は“安い労働力”とはいえない。A社のように、人材として大切に育てていけば、技能実習生のほうから実習の延長を申し出てもらえる可能性も出てくる。最長で5年―自社の戦力として活用できるかどうかは、受け入れる企業側の姿勢次第だ。

(つづく)
【東城 洋平/代 源太朗】

 

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