2024年04月16日( 火 )

昨今M&A事情(8)JPホールディングス~投資ファンドと対立した社長が、総会でクビ(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 経営陣と投資ファンドの泥沼抗争が続く保育園大手JPホールディングス(HD)は、名古屋市で定時株主総会を開いた。その株主総会で荻田和宏社長の取締役再任を求める会社提案が否決された。上場企業の総会で社長再任が否決されるのは異例。ほんの半年前に筆頭株主に躍り出た投資ファンドに会社を乗っ取られてしまったのだ。

荻田社長の賛成率はわずか36.06%

 JPホールディングス(HD)は7月2日、株主総会の決議事項の賛否を示す臨時報告書を開示した。それによると、会社が提案した取締役8人の選任を求める議案では荻田和宏社長など6人の再任を否決した。荻田氏の賛成率は36.06%と過半数を大きく割り込んだ。

 発行済み株式の27.41%を保有する筆頭株主の投資会社マザーケアジャパン(本社:東京都渋谷区)の坂井徹代表を含む取締役2人を選任する株主提案が可決された。坂井氏の賛成率は63.56%だった。

 取締役は荻田派の役員が一掃されたため、会社提案の2人と株主提案の2人の4人となった。新社長には会社側と筆頭株主の双方が支持する古川浩一郎取締役が就いた。古川氏は賛成率97.69%を得ていた。

復権を図る創業者と阻止する社長の対立

 混乱の発端は3年前に遡る。15年2月17日、創業者の山口洋氏が体調不良を理由に社長を辞任、荻田和宏氏が社長に昇格した。突然の社長交代は、その後の紛争の過程で、山口氏のセクハラ問題だったことが明らかになる。
以後、創業者の山口氏と社長の荻田氏の確執が表面化する。16年6月の定時株主総会で、荻田氏ら一部役員選任議案の賛成率が58%台にとどまった。大株主の山口氏が反対票を投じたからだ。

 17年6月の株主総会では、前社長の山口洋氏に近い株主が取締役の任期短縮などを求める株主提案を行ったが、僅差で否決された。

 山口氏側は、攻撃の手を緩めない。17年9月、山口氏は臨時株主総会を招集。山口氏側の提案は「定款変更と取締役の解任」。取締役の任期を2年から1年に即時変更し、取締役の解任方法の規定を定款から削除するという提案を行った。

 会社側は取締役の任期短縮は全取締役の即時退任となることから、これを回避するため、現経営陣は取締役の任期短縮を2018年度以降から行なうという提案を提出した。

(つづく)
【森村 和夫】
 

(7・後)

関連記事