2024年03月29日( 金 )

世界平和に向けて(25)技能実習生、特定技能の外国人人材を積極登用する躍進企業

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 いまだ収束の兆しがみえないコロナ禍において外国人の人材を積極的に登用しているのが宮村鉄筋工業だ。同社の宮村博良社長に業界の現状を聞いた。

RC構造 イメージ ――鉄筋工の仕事について教えてください。

 宮村博良氏(以下、宮村) 「RC構造」という鉄筋コンクリート造りや、「SRC構造」という鉄骨と鉄筋コンクリートを併用した構造物において、主にビルディングなど高層建築物の骨組みの役割を果たすのが鉄筋です。
 高層建築物に、この鉄筋が入らないと建物は自立せず、必要不可欠なものです。この鉄筋を施工図に従い配筋し、継手を行い、組み立てるのが鉄筋工の仕事です。

 ――宮村鉄筋工業の施工体制は。

 宮村 大牟田と熊本合わせて79名の従業員が在籍しています。また、当社傘下の下請施工体制組織が31社あり、その各社で雇用する社員88名を含め、計167名で業務を請負っています。
 これら作業スタッフが当社の管理者とともに各請負現場で鉄筋工の仕事をしています。そのなかにはフィリピンから来た技能実習生と特定技能の社員がいます。

 ――御社の鉄筋加工工場の作業能力について。

 宮村 現在稼働中の3工場は第一・第二工場が月2,000t、第三工場は300t加工可能です。現在、第四工場を建設中で、それが完成しますと、さらに加工量が増えます。

 ――外国人雇用の現況について教えてください。

 宮村 20年前から中国人、タイ人、そして現在はフィリピン人を雇用しています。母国の送り出し機関から技能実習生の在留資格で入国し、19名が働いています。19人中のうち10人は、技能実習が3年経過した後、特定技能1号の在留資格を取得して働いています。

 ――技能実習生が特定技能に移行するのは何か理由がありますか。

 宮村 技能実習制度に続き、新たに2019年4月、出入国管理法が改正された在留資格です。深刻な人材不足と高齢化に直面している建設業界ですので、当社も人手確保のために、同制度を活用しています。

 ――外国人人材の給与や福利厚生、居住環境および将来に向けて期待することはありますか。

 宮村 まず当社社員全員と外国人人材の間には、まったくトラブルがありません。外国人の方々は仕事熱心で、しっかり働いています。雇用条件も日本人と同等以上、と給料も安定しており、福利厚生も全員加入しています。住居も1人につき一部屋準備し、快適な生活環境を整えています。彼らは母国に帰国せず、当社で長く働き家族を日本に呼んで一緒に住みたいと希望しているので、特定技能1号から2号に変更できる5年間をまずは頑張っています。

 特定技能2号に移行後は、6年目から10年目まで日本で働くことができます。その後、永住権申請が叶う可能性もあります。日本で彼らが家族を持ち、生活することは、すなわち急速に高齢化が進行する業界において、生産年齢・人口減少の歯止めもなります。

▼おすすめ記事
コロナ禍でも活気みなぎる「鉄筋工業界」の現況

 ただ私は、建設業界、そして鉄筋工業界が外国人頼みになることは望んでいません。クオリティの高い仕事を、日本人の職人に承継したいとの思いが強いので、鉄筋工業界全体で職人を育成するという共通認識を持つことが必要だと思っています。

建設業種が受け入れる在留資格の特定技能について

 特定技能には1号と2号があり、1号は5年経過してから2号に移行することが可能です。しかし、新制度ができて約2年ですので、全国的に2号への移行者はいないのが現状です。建設業種は、日本国内で雇用する特定技能1号ビザ発行の上限を、最大で40,000人としており、さらに対象職種や分野にも制限があります。

 たとえば鉄筋工の特定技能は、加工工場で切断、曲げ、溶接などの作業をして鉄筋を現場に搬送し組立てる作業工程で、主たる業務が鉄筋の溶接作業では特定技能人材を雇用することができません。

 特定技能に移行前の技能実習生で溶接技術を学んでも、建設業種で特定技能に移行する場合、主たる業務が溶接では雇用できません。この点は注意が必要で、特定技能の鉄筋工は溶接を除く業務に限られているのです。

 詳細は国土交通省の運用ガイドラインを確認したうえで、違法業務に従事させてしまわないように留意する必要があります。

建設業種で特定技能1号を有する人材を雇用する際の留意点

 とくに建設業種で特定技能人材を雇用する場合、入管に在留資格を申請する前に特有の制度に準ずる必要があるので留意してください。

 技能実習生を特定技能1号に移行して雇用するには、(一社) 建設技能人材機構 JAC (Japan Association for Construction Human Resources)に入会する制度になっています。同団体は2019年4月に設立した国土交通省の外郭団体組織です。

 建設業種が特定技能の外国人を雇用する場合、まず国土交通省から認定を受けていなければ、入国管理局は建設業種に対して、特定技能の在留資格を発行しないという特有の制度になっています。

 令和3年6月2日改定のJAC賛助会員の場合、企業や建設関連団体の会費は年額24万円、さらに特定技能受け入れ負担金が、特定技能国内試験合格者で、毎月1人13,750円(年額16万5,000円)と高額なランニングコストがかかります。JACに入会しない建設会社は特定技能1号の外国人人材を雇用できない仕組みとなっています。

 ――同社もJACに加入し、最短でも5年間、このコストと日本人同等以上の待遇で外国人を雇用している。宮村社長から話を聞き、「鉄筋工業界全体をさらに改善していきたい」という未来への展望に、強い熱意と意気込みを感じた。

【岡本 弘一】

(24)
(26)

関連記事