2024年04月19日( 金 )

洋上風力発電、政府が2030年に10GW導入を目指し開発推進

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政府が洋上風力の普及を推進

 脱炭素社会に向けた再生可能エネルギーとして有望視される、洋上風力発電。政府は2030年までに1,000万kW、40年までに3000~4,500万kWの洋上風力発電を導入することを目標にしている。

 20年12月開催の「洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」(第2回)で発表された「洋上風力産業ビジョン(第1次)」によると、産業界は着床式の洋上風力発電コストを30~35年までに8~9円/kWhまで削減することを目指している。欧州では洋上風力発電のコストが年々下がっており、落札額が10円/kWh以下となっている事例もある。

洋上風力発電
洋上風力発電

    政府は洋上風力発電の普及に向けて、21年から10年間、毎年100万kW程度の促進区域を指定し、市場づくりを継続して実施する。また、洋上風力発電は機器や部品が数万点と多く、関連する産業も幅広い。産業界は、サプライチェーンの国内調達比率を40年までに60%に高めることを目指している。

 洋上風力発電をめぐって、大規模導入にあたっての課題もある。欧州では、環境アセスメントや系統接続などを政府が主導する「セントラル方式」で開発が進められているが、日本では、各入札企業が風況・地質調査や環境アセスメントの実施、地元対策、系統の確保などを個別に行っており、重複して行われることの非効率さが指摘されてきた。そのため、政府が実証事業を通じてこれらを主導して行う「日本版セントラル方式」の導入が検討されており、洋上風力発電の開発が効率化されると期待されている。洋上風力発電の公募による事業者選定から運転開始までのリードタイムは8年とされるが、「日本版セントラル方式」が導入されると3~4年に短縮されると予想されている()。

 洋上風力発電は電力の大消費地である都市部から離れた場所で行われることが多く、都市部に電力を運ぶ大送電網も必要となる。効率的で安価に送電できる直流送電の検討を含め、系統インフラの整備が行われる予定だという。発電設備の大型化が進んでおり、大型風車の設置や管理ができるよう、港湾インフラの整備が進められている。4つの基地港湾のうち秋田港の整備が完了し、秋田県能代港、茨城県鹿島港、北九州港の整備が行われている。加えて、洋上風力発電のサプライチェーンにおけるスキルの取得など、専門的な能力を備えた人材育成が必要とされている。

洋上風力発電の大規模開発

 北海道では30年に124~205万kW、東北では407~533万kW、九州では222~298万kWの洋上風力発電の導入が目標となっており、これらの3つの地域での大規模な開発が見込まれている。洋上風力発電の地域ごとの導入目標は、下図の通り。

エリア別導入イメージ (出典:資源エネルギー庁「第2回洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」(2020年12月15日)の「洋上風力産業ビジョン(第1次) 概要」)
エリア別導入イメージ
(出典:資源エネルギー庁「第2回洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」(2020年12月15日)の
「洋上風力産業ビジョン(第1次) 概要」)

 洋上風力発電は、19年4月に施行された「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(再エネ海域利用法)」により、下記のように開発に適した5つの「促進区域」、7つの「有望な区域」が指定されている。有望な地域として指定されると、地元調整のための協議会の立ち上げが行われ、自治体や関係者間での合意が得られると促進区域となり、開発が進められる。促進区域では、公募による事業者の選定が行われる。

促進区域、有望な区域の指定・整理状況
促進区域、有望な区域の指定・整理状況

【石井 ゆかり】

※:経済産業省「第28回再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」の「2050年カーボンニュートラルの実現に向けた2030年の風力発電導入量の在り方」より ^

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