2024年03月29日( 金 )

【企業経営ワンポイント】「代表者勘定」は相続財産となる

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IYASAKA CONSULTING(株) 玉井 省吾 代表取締役副社長

 借入金は金融機関からが一般的で、経営者はリスクに対する認識をお持ちで準備・対策は打っておられると思います。今回は、見落としがちな「代表者勘定」についてお話しします。

 オーナー会社の場合、決算書に「代表者勘定」が記載されているのをよく目にします。会社が代表者から借入しているケースです。ここで確認しておかなければならないのが、代表者が亡くなったら、相続財産になることです。ほとんどの場合、法人に貸し付けるくらいですので、代表者の資産背景は大きく、そのうえに「代表者勘定」の分まで考えなければならず、相続税負担が重くなります。

 10年ほど前、ある優良法人の代表者より、暦年の貸付が膨らみ、約1億円になっているとの相談を受けました。さっそく、その他の不動産・金融等資産を聴き取りしてみると、このままでは万一のときに、相続財産をかなり取り崩さないと相続税を払うことができない状況であることがわかりました。そこで活用したのが、生命保険です。後継者を契約者、代表者を被保険者、後継者を受取人としたものです。この場合、保険金は後継者の一時所得になります。つまり相続財産を守るため、相続財産とは別の納税資金を準備することができ、解決しました。現在もその代表者は、精力的に仕事を続けておられます。

 もう1つの「代表者勘定」として、代表者が会社から借入しているケースもあります。当時、銀行員だった私は、製造業を営む法人の代表者から融資の相談を受けました。結局、融資は引き受けられなかったのです。理由は先代の代表者勘定を死亡退職金で清算したために、法人が債務超過となっていたからです。当時、中国・東南アジアの輸入製品との競合で減収減益が続いていた状況でした。銀行員だった私は何もお役に立てず、悔しい思いをしました。仮にですが、先代を契約者・被保険者とした個人契約の生命保険と、退職金の財源としての法人契約の生命保険が準備できていれば、状況は変わっていたと思います。

 2つの事例をお話ししましたが、これを機に「代表者勘定」についてしっかり確認されてみてはいかがでしょうか。

<プロフィール>
玉井 省吾(たまい・しょうご)
1965年生まれ。長崎出身。88年、福岡シティ銀行入行。県内外の支店に勤務し、中小企業の法人営業を担当。事業者に対し、事業融資、経営アドバイスを行う。99年、外資系保険会社に入社し、ライフプランナーとして勤務。その後、保険を活用した経営コンサル業を開始。2015年より現職。
IYASAKA CONSULTING(株) 代表取締役副社長

 

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