2024年03月29日( 金 )

箱崎キャンパス跡地再開発~期待と不安が入り交じる地元の声

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 移転が進むにつれて、次第に様変わりしつつある箱崎キャンパスの周辺エリア。地元は、今回の移転にともなう跡地再開発について、どのように見ているのだろうか――。

 地元の不動産業関係者は移転が進むにつれてのまちの移り変わりを、次のように教えてくれた。
 「以前の箱崎のまちは九大の学生さんで賑わっていて、1月から3月のシーズンには約200件の物件の紹介案件があったものです。ところが工学系の移転が完了してしまった今では、年2~3件にまで激減してしまいました。その代わりに増えたのが、ネパールやベトナムなどの外国人の方々。かつて学生が住んでいたワンルームの空きを、彼らが埋めてくれたようなかたちです。元々、九大の留学生がいたので、それほど受け入れに抵抗はありませんが、まちの雰囲気が変わってきたことは感じますね」。

 箱崎キャンパスに近接する企業の代表は、「5年前に比べると、学生だけでなく、教職員の方々も含めて、人の流れが減っているのはひしひしと感じます」と語る。
 また同氏は、今なお協議が重ねられている再開発の方向性などについては、「いろいろと良いイメージばかりが提示されていますが、全体の骨組みがなかなか見えません。福岡市が行政の役割として、もっと具体的なグランドデザインを提示すべきです。そうでないと、この先のまちづくりにおいて、市がきちんとイニシアティブを取れるか疑問です」と不満の声を上げる。

 昔から箱崎に住むという地元の人は、「元々、この地に九州大学が設立される際に、『国立大学が来るから』ということで、地権者が九大に土地を売却譲渡した経緯があります。ですが、来るときにはいろいろと地元に協力を仰ぎながら、今度去るときは、地元に説明があったのはすでに移転計画がすべて整った後の、事後承諾のようなかたちでした。そのことで、九大の姿勢に不信感を持った地元の地権者もいたと聞いています」と、内情を打ち明ける。

 今後の再開発への期待について、地元の建設会社代表は「地下鉄貝塚駅の東口のほうは道路が細く渋滞も起こりやすいのですが、都市計画道路などが整備されることでの渋滞緩和には期待しています。また、箱崎中学校の移転も決まっていますし、もっと公園などが増えてくれるといいですね。あとは勝手な考えではありますが、箱崎の法務局なども移転してきてくれるといいのでは、という思いはあります」との意見を寄せてくれた。

 その他には、「やはり、高齢者や子ども、障がい者に優しいまちづくりを期待しています。箱崎らしい、今あるような古い建物をベースに、グループホームなども整備されるといいかもしれません。ただ一番は、九大に代わるような学校が来てくれるのが、地元にとってはありがたいですね」(前出不動産業関係者)、「このエリアには高層住宅は必要ないと思いますし、例に出すのは悪いですが、東区千早のような開発にはなってほしくありません。緑のオープンスペースを取り入れたまちづくりを行政主導でやってほしいと思いますし、防災センターの建屋の整備などもお願いしたいですね」(前出企業代表)――といった声が寄せられた。

 今回、ごく一部の地元の声の紹介ではあるが、跡地再開発については手放しに期待する声だけでなく、まだまだ不安も入り交じっているのが現状のようだ。

【坂田 憲治】

 

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