2024年03月29日( 金 )

企業経営ワンポイント~偽名預金と名義預金

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 相続・事業承継の御相談を受けたときに、必ずアドバイスさせていただくのが「名義預金」についてです。そこで、そもそも「名義預金」とはどんなものでしょうか?

 まず、「偽名預金」「借名預金」「名義預金」について、順を追ってお話しします。現在、口座開設の際は法律で本人確認が義務付けられていますが、以前は好きな名前で口座をつくることができました。「山田太郎」とか「鈴木一郎」、極端な例では「犬」や「猫」といった名前でもつくれたのどかな時代があったと銀行の大先輩から聞いたことがあります。これを「偽名預金」といいます。その後、マル優(非課税枠)等の不正悪用が行われ、現在に至っています。

 続いて「借名預金」ですが、「偽名預金」は架空の人物に対して「借名預金」は実在する人物名義の口座となります。ただし、名義を使われている本人は、そのような口座があること自体を知らないケースです。前述の通り、現在は本人確認が厳しく義務付けられていますが、かつては金融機関の本人確認手続も緩く、家族であれば別の家族名義・親族名義の口座を開設することも比較的簡単であったようです(親が子の名義の預金を作成することは、子が未成年の場合には、今でも可能です。)

玉井 省吾 氏

 最後に「名義預金」です。どのようなものかを説明しますと、表面的にはある人の名義で預金されているが、実際にお金を出している人は別人で、その人がその預金の実際の管理者・所有者である預金のことを指します。たとえば、子どもが未成年のうちに親がつくった口座に多額の預金がそのまま残っている場合。孫にわからないように孫名義の口座をつくり、贈与を行っている場合。妻が夫の収入のなかから多額の預金をしている場合。このような場合で相続が発生した際に、財産は渡した人の財産のままという「名義預金」と認められます。
 銀行員時代に不動産賃貸業オーナー兼医療法人の理事長が亡くなり、義理の娘さんから相談を受けました。内容は相続税の申告漏れで、さらに相続税が課税されること、孫(義理の娘の子)への贈与が認定されず、遺産分割の対象となり、別の相続人に渡るとのことでした。まさに贈与と認定されず「名義預金」と認定されたのです。理事長の多額な相続財産の一部を孫へ贈与していくという相続税対策が否認されたのです。

 昨今、相続税基礎控除額の引き下げで、金融機関より贈与税の非課税枠を活用した対策を提案される機会が増えていると思います。私も相続財産を守るため、減らさないために、非常に有効な生命保険の活用を提案しております。相続財産とは別に相続税を支払う原資をつくるのです。契約者(相続人)、被保険者(被相続人)、受取人(相続人)の死亡保険金が一時所得となる契約の御提案です。その際のポイントは、保険料を被相続人より相続人に贈与することでしっかりとした財源が確保できることです。ただ、どのような贈与を活用した対策も、契約書の作成や贈与税を申告する等の形式はもちろんですが、贈与を受ける側が受け取った財産を自ら管理することが大切です。

<プロフィール>

玉井 省吾(たまい・しょうご)
1965年生まれ。長崎出身。88年、福岡シティ銀行入行。県内外の支店に勤務し、中小企業の法人営業を担当。事業者に対し、事業融資、経営アドバイスを行う。99年、外資系保険会社に入社し、ライフプランナーとして勤務。その後、保険を活用した経営コンサル業を開始。2015年より現職。
IYASAKA CONSULTING(株) 代表取締役副社長

 

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