【法律相談】動産売買先取特権に基づく物上代位
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非常時の債権回収方法
取引先の倒産などの非常時の債権回収に大きな威力を発揮する可能性がある方法として、法定担保の1つである「動産売買先取特権に基づく物上代位としての債権差押え」という方法があります。
貴社(X)が建築資材を販売している取引先(Y)が破産申立準備に入りました。販売した資材はYが指定する転売先(Z)に直接納品していました。このときに、YのZに対する転売債権を差押えて回収するという方法です。
(1)抵当権等の担保設定契約をしていなくても、要件を充たせば差押を実行できること。(2)担保権の実行ですので、訴訟をして判決を得るという時間を要する手続を経ずに迅速に差押えができること。(3)Yが破産手続をとった後であっても実行可能であること(ただし、Zが支払いをする前に差押える必要はあります)という特徴があり、取引先の破産などの非常時に効力を発揮する実効的な債権回収方法といえます。
債権回収に必要な作業
この差押えが認められるためには、(1)XY間で売買がされて、Yが商品を受領した事実。(2)YZ間で転売がされて、Zが商品を受領した事実。(3)(1)の商品と(2)の商品とが「同一」である事実を、書面をもって証明する必要があり、この作業は意外と簡単ではありません。
申立前に周到に資料の準備が必要であり、XY間の売買、YZ間の転売の双方について、取引基本契約書、見積書、注文書、注文請書、出荷依頼書、荷受票、納品書、貨物受取書、請求書などの取引に関する書類を整理していく必要があります。
YZ間の転売については、転売先であるZの協力が必須です。また、品名・品番・数量・サイズ・色・形状などで商品を特定することになりますが、同じ商品でも、会社ごとに品名や品番が異なることも多く、また伝票の誤記などがありますと、商品の同一性の証明に一苦労することもあります。また、商品がX→Zに直送されたのではなく、一旦、Yに引き渡されているケースなどでもより一層同一性の立証が難しくなります。
平時の一工夫で回収を迅速に
これらの問題は、YからXへの注文の際に、ZからYへの注文書を添付させることで同一性の証明を容易にすることもできますし、取引基本契約書の内容を工夫すること、貨物受領書などに極力商品明細を詳しく記入するなど、平時における工夫によって、非常時の債権回収を迅速に行うことができるようになります。
非常事態になってから弁護士に依頼するのではなく、平時からこのような一工夫について弁護士に相談して、非常時に効果的な対応ができるよう備えてください。
<プロフィール>
岡本 成史(おかもと・しげふみ)弁護士
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。福岡県建築紛争審査会委員、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、岡本綜合法律事務所月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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