最大の観光資源は歴史と伝統~長崎「らしい」まちづくりへ尽力する
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(株)メモリード 吉田 茂視 代表取締役社長
創業の地へ感謝
――長崎の活性化には、何が必要だと考えていますか。
吉田 人口減少に歯止めをかけるのはもちろんですが、豊富な観光資源を生かして交流人口を増やしていくことが重要であると考えています。
市内中心部にある中通り商店街は、江戸中期から続く長崎で最も歴史ある商店街の1つです。眼鏡橋から徒歩1分と絶好のロケーションですが、観光客にはあまり知られていません。この中通り商店街、そして中島川、寺町を含めたエリアは、日本の歴史と伝統が根付いたすばらしいまちなのです。
歴史と伝統という資源を生かして、このエリアの活性化を図っていくことが必要です。そのために、2015年に「中島川周辺の元気なまちづくり研究会」を発足させ、長崎の活性化に向けての現状と課題を話し合ってきました。
――長崎市が進める「まちぶらプロジェクト」の一環なのでしょうか。
吉田 スタートはまちぶらプロジェクトと違いますが、今では市と協力して長崎のさらなる発展に努めています。まちぶらプロジェクト認定事業として、中島川周辺観光案内所「もてなしや」、まちなかの名所をイメージしたチョコレート製品を販売する「チョコレートハウス」を開設しました。
チョコレートを選んだきっかけは、ヨーロッパでの経験でした。ヨーロッパでは、お土産の品としてチョコレートが贈られることが多いのです。日持ちするし、かさばらない。来年、長崎の教会群が世界文化遺産に登録されれば、欧米諸国からの観光客が増えるでしょう。その際に、チョコレートが土産物として重宝されるのではないかと考えたのです。
鎖国時代、長崎は出島という海外との交流窓口を唯一持っており、チョコレートやコーヒーなど海外の文化をいち早く取り込める環境にあったのです。歴史と伝統というすばらしい資源を生かし、広めるため、プロジェクトには積極的に関わっていきたいですね。
また、弊社はまもなく創業50周年を迎えます。これまで長崎の地で事業を継続できたことへ感謝するとともに、地域振興の一助になれればと思います。
生かすところは生かし変えるべきところは変える
――まちの活性化には、歴史と伝統の活用が不可欠となるわけですね。
吉田 その通りです。もちろん、長崎の歴史に興味を持って来てもらった観光客の方々に対するフォローも必要です。
グラバー邸から海を臨んだ景色は大変すばらしい。弊社はグラバー園の指定管理者も務めていますが、グラバー邸のベンチは、全部建物側を向いていることに気がついたのです。これは、海側の造船風景を見せないためといわれています。軍艦造船で栄えたまちならではといえるでしょう。こうした特色を、生かすべきものは観光資源として生かし、変えたほうが良いところは柔軟に対応したほうが良いと思います。指定管理者となって以降は、グラバー園の夜間開園を始めました。長崎には夜景というすばらしい資源もあるのです。
――まちづくりにおいて、行政には何を期待しますか。
吉田 長崎には鎖国時代にも交流があった中国やオランダなど「華」「蘭」の文化が溶け込んでいます。「華」「蘭」だけでなく、伝統ある中島川、寺町エリアは、「和のたたずまいと賑わいの粋なまち」として、「和」の文化を生かしたまちづくりを進めていくことが必要だと思います。東京オリンピック(2020年)までには、我々民間と行政とで役割分担して、京都や金沢などにも負けない「観光客が訪れたくなるまち」にしていきたいですね。
大切なのは、1つの「方向性」を見出すことです。長崎市をはじめ、行政にはその旗振り役としての機能を期待しています。
そのためには、課題も少なくありません。たとえば、中華街は夜8時にラストオーダーで、9時には閉店という店が多いのです。それが習慣として根付いていますから、街灯も少なく、夜は本当に賑わいが感じられないというのが現状だと思います。観光客数の増加を図るうえでは、改善すべきところもたくさんあります。地域の方々と協力して、地域のためになるまちづくりを心がけていきたいですね。
出島などの歴史的背景からみても、長崎にはよそ者を受け入れる下地があります。その県民性を最大限に発揮するためにも、さらなるインフラ整備と、培われてきた歴史を武器に、観光客の取り込みに注力していくことが、活性化への近道ではないでしょうか。
【永上 隼人】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:吉田 茂視
グループ総合本部:長崎県西彼杵郡長与町高田郷1785-10
設 立:1969年7月
TEL:095-857-1777
URL:http://www.memolead.co.jp<プロフィール>
吉田 茂視(よしだ・しげみ)
1943年9月26日生まれ。北九州市出身。福岡大経済学部卒。69年、長崎市で現・(株)メモリードを設立した。2006年には藍綬褒章を受章。関連記事
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