2024年04月24日( 水 )

知られざる観光資源を掘り起こし、博多部を魅力ある楽しめるエリアに

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博多旧市街プロジェクト

 2017年12月、福岡市の新たなプロジェクトとして「博多旧市街プロジェクト」が始動した。同プロジェクトは、中世最大の貿易港湾都市の中心であった「博多部」の歴史と魅力を広く伝えていくことを目的に、価値ある資源をストーリーと街並みでつなぎ、まちの整備を進めていくというもの。今回、プロジェクトの担当課である福岡市経済観光文化局・地域観光推進課に、改めて話を聞いた。

博多部の魅力の周知促進を

博多の総鎮守「櫛田神社」(提供:福岡市)

 「今回の『博多旧市街プロジェクト』は、天神地区で進められている『天神ビッグバン』と対なすプロジェクトとして始動されたものです。天神ビッグバンが、再開発によって新たな空間と雇用を創出することでまちの活性化を促すプロジェクトだとすると、博多旧市街プロジェクトは、博多部を中心としたエリアで改めて歴史や伝統といった福岡の魅力を掘り起こし、観光資源として市内外に周知させることを目的としたプロジェクトです」と、地域観光推進課長の黒瀬圭氏は話す。

 博多旧市街プロジェクトの対象エリアとなっている博多部は、今なお独特の歴史・伝統・文化を数多く伝える場所。たとえば、大陸から日本に文化が伝わる際に玄関口となったのが博多で、うどんや蕎麦、饅頭の発祥の地とされる「承天寺」や日本最初の本格的な禅寺「聖福寺」、菓子のういろうの発祥地とされる「妙楽寺」など、さまざまな文化の“オリジン”というべき場所が数多くある。ほかにも、博多を代表する祭りである博多祇園山笠が奉納される博多の総鎮守「櫛田神社」を始め、歴史ある寺社仏閣が連なる伝統的な景観が特徴的なエリアでもある。

 「実はあまり認知されていないだけで、このエリアには京都にも負けない歴史的な観光資源が数多く眠っています。それらを改めて市内外の人に知ってもらい、実際に訪れてほしいと思います」(黒瀬氏)。

 博多旧市街プロジェクトでは、こうした博多部の歴史・伝統・文化を際立たせ、福岡市の魅力を高める取り組みを官民の連携によって街全体で推進していくことを狙いとしている。掲げられている施策パッケージは、(1)「博多部の魅力をストーリーでつなぐ」、(2)「博多部の魅力をまちなみでつなぐ」の2つで、歴史資源の発掘とストーリーづくりや歴史・文化に配慮した道づくり、観光案内板や都市サインの改修、PR・情報発信の強化、民間プレイヤーによる海外向け観光商品販売、オープントップバス「博多旧市街コース」の検討、海外有名旅行サイトとの提携・販売ルートの確保などを予定。今年2月に発表された「平成30年度当初予算案」では、PRや観光振興、観光案内板などの改修費用として約1,300万円が、歴史・文化に配慮した趣のある道路に再整備費用として約3億1,200万円が盛り込まれた。

 「今後、博多部の寺社エリアの歴史文化に配慮した石畳風の道路整備や、統一デザインの観光案内板、都市サインの改修などといった整備を進めていく予定です。また、民間プレイヤーの参加を促すことで、今後は体験型観光なども増えてくるといいですね」(黒瀬氏)。

プロジェクト着々進行

出来町公園観光拠点施設イメージパース

 プロジェクトの第1弾として、「御供所町・寺町の回遊・観光拠点」と位置付けられ、昨年12月にリニューアルオープンした「出来町公園」。同公園内で整備が予定されている観光拠点施設の設置・管理運営事業の優先交渉権者として、今年2月に(株)TATERU(旧社名:(株)インベスターズクラウド)が選定されていたが、このたび同社が提案した事業内容に決定。基本協定が締結された。

 同社による提案では、観光拠点施設のテーマを「博多旧市街の観光拠点創生およびAI・IoTを活用した観光イノベーション」とし、回遊性・利便性の向上、賑わいの創出、街並みの形成・先導を図るというもの。周辺の街並み・景観と調和した観光拠点施設が建築される予定で、IoTデバイスを活用したまち歩き観光やデジタルインフォメーションウォールを活用した観光情報などの発信が行われるほか、オープンカフェや約50席以上の休憩スペースなどが設置される。また、施設利用者がAIやIoTを活用した観光サービスを利用することにより、国内外観光客の属性情報・位置情報・チャット履歴・音声翻訳履歴等の観光に関わるさまざまなデータを収集。蓄積されたデータベースは福岡市と共有し、ビッグデータを活用した次なる観光施策の企画立案や新たなソリューションの開発・提供につなげていくとしている。
 新たに整備される観光拠点施設は、今年9月ごろに工事着工し、来年4月ごろに供用開始予定となっている。

福岡アジア美術館7階には「アートカフェ」がオープン

 3月31日には、博多旧市街プロジェクトの一環として「福岡アジア美術館」(福岡市博多区)の1階エントランスと7階ラウンジの改装が完了。一般公開された。1階エントランスには、中国人アーティストの卜樺(ブー・ホァ)氏による巨大壁画が新たに登場。福岡アジア美術館の存在を目立たせるとともに、観光客にとっての記念撮影の場所にもなるようにとの意図が込められている。また7階ラウンジには、アジアやアート、国内外の旅などに関する書籍約1万冊が置かれた「アートカフェ」がオープン。約550m2の空間の随所に最大5mの本棚を新設し、読書のみであれば無料で利用できるもの。こうした福岡アジア美術館の改装は、普段、美術館に馴染みのない人でも気軽に立ち寄れるようにすることで、博多旧市街における回遊拠点としての役割が期待されている。

【坂田 憲治】

 

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