2024年03月29日( 金 )

留学生雇用の留意点~「一蘭」事件を例に

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岡本綜合法律事務所 岡本 成史 弁護士

 3月にラーメンチェーン「一蘭」が、大阪の店舗で法定時間(週28時間)を超えて留学生を働かせたなどとして、社長らが出入国管理法違反(不法就労助長罪)の疑いで書類送検されました。近年、人手不足への対応から、飲食店を中心に外国人アルバイトを雇用する事業者が増えています。今回の事件から、何を学べばいいでしょうか。

 「留学生」は、あくまで教育を受ける目的で来日しています。ゆえに原則として就労不可なのですが、生活費を稼ぐ必要のある留学生が多いため、「資格外活動」の許可を受ければ、週28時間まで(学校の長期休業期間中は、1日について8時間以内)であれば、風俗営業を除く就労が可能となります。単純労働への就労も可能です。従って、事業者は留学生をアルバイトとして採用する前に、資格外活動許可を受けているかを確認しなければなりません(許可を得ていない場合、不法就労になります)。これは、留学生が有するパスポートの許可証印、または「資格外活動許可書」で確認することができます。そして雇用後は、「外国人雇用状況届出書」を管轄のハローワークに提出し、労働時間が週28時間を超えないように厳密に労働時間管理を行う必要があります。この労働時間の上限には、残業時間も含みます。この点で、「一蘭」は届出をせず、なおかつ上限時間を超過していることを知りつつ就労をさせていたということで、今回の厳しい処分となったのです。

 では、資格外活動許可の確認と採用後の労働時間管理を厳格に行っていれば問題はないのでしょうか――。
 実は、そうではありません。たとえば、コンビニ2店舗でこっそり掛け持ちしている留学生がいた場合、2店舗合計で週28時間までしか就労できません。そうすると、知らず知らずのうちに上限時間以上就労させているという事態も発生します。また、留学生が学校を卒業・退学した場合、留学生の身分を失うため、資格外活動許可で就労することができなくなります。昨年11月に、一蘭に警察の捜索が入ったときも、専門学校へ留学していた従業員が、専門学校を除籍された後も一蘭で就労していたことが不法就労とされたとの報道もされていました。このように、知らないうちに不法就労を助長していたという事態も発生し得るのです。

 しかも、以前は不法就労と知らずに雇用した場合は処罰されなかったのですが、2010年以降は、知らないことに過失がない場合を除き、処罰されることになったのです。さらに、安倍政権は不正を断じて許さないという方針であり、政権誕生の翌13年から摘発数は増加傾向にあります。

 そこで、留学生を雇用する事業者は、資格外活動許可書などだけでなく、定期的に学生証原本を提示させたり、申告内容に虚偽がないことの宣誓書や、虚偽が発覚した場合には即刻解雇するというような内容を含んだ契約書作成などの対策が必要になります。

 今後、外国人を雇用する必要性はますます高まっていくことが予想されますが、ビザ取得手続などを扱う行政書士は、その後の労務管理には疎く、逆に労務管理を扱う社労士は入管法には明るくありません。そこで、入管法と労務管理の双方に詳しい弁護士に相談されることをお薦めします(ただし、弁護士も入管法に関しては詳しくないことも多いのが実情です)。

<プロフィール>
岡本 成史(おかもと・しげふみ)弁護士
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。福岡県建築紛争審査会会長、経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士。岡本綜合法律事務所代表。

 

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