2024年04月19日( 金 )

企業経営ワンポイント「不動産投資と保険」

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(株)アンツインシュアランス 玉井 省吾 代表

 昨年末、「増加する高齢者の医療費や社会保障費の膨張と国民の所得が減るなかで、税金が増えて2040年には所得の半分が税金になる」との報道がされました。そういったなかでも、将来の老後の生活資金や会社の資産形成として不動産投資は盛んに行われています。今回は、経営者の視点から「不動産投資と保険」についてお話しします。

 不動産と保険には、密接な関係があります。不動産(建物)購入時、ほとんどの場合で火災保険(損害保険)に加入して災害のリスクに備えます。また、不動産の購入にあたって多くの場合、金融機関より借入を行い、その際には死亡保険(生命保険)に加入して借入金の返済のリスクに備えます。

 まず不動産投資のメリットですが、不動産の「減価償却」で法人税が軽減される場合があります。不動産には、実際に価値が目減りしているかどうかに関わらず、一定の割合で価値が目減りしていると仮定して、損金と認められる「減価償却」があります。法人で不動産を所有して本業での営業利益2,000万円で、不動産の減価償却1,000万円が不動産所得のマイナスの場合、営業利益は1,000万円(2,000万円-1,000万円)となり、法人税が軽減できます。もう1つ、法人のキャッシュフローを良くすることができる場合があります。不動産の収益面から、借入金利と返済期間を有利な条件で金融機関より調達することで余剰金を生み、資金繰りが楽になります(賃料収入-諸経費-元利金返済金)。

 反対にデメリットですが、まず固定資産税・不動産取得税、管理費・修繕費・保険料、借入利息がかかることです。次に気を付けておきたいのが、一定期間が過ぎて減価償却ができなくなり、また借入利息などの減少も合わせて経費に入れるものが少なくなり、収益が発生して多くの税金を支払うこととなる。結果、キャッシュフローが悪くなる場合があります。

 もう1つ重要なことは、不動産はいつでも思い通りに換金できるというものではないことです。先日、ある経営者より、「取引先が破綻して売上金が未回収となったため、資金繰りが悪化した」という財務相談を受けました。その企業は創業時より業績が順調で、数年後から本業と並行して不動産投資を行ってきてキャッシュフローは良好でしたが、今回の未収金で資金繰りが耐えられない状況でした。取引先に取引条件を緩和してもらうことで何とか乗り切っていますが、もし仮に、不動産投資と保険をバランス良く活用していれば、もっとスムーズに解決できたかもしれません。不動産に投資する資金の一部を生命保険の保険料として、保障と同時に換金性の高い金融資産として積み立てていれば、リスクが軽減できていたはずです(具体的には、契約者法人・被保険者社長・受取人法人・長期平準定期保険・保険料の半分が損金算入。仮に保険料年間300万円として、300万円×15年×解約返戻率約95%で約4,200万円)。今回は急な出来事で、所有不動産の売却が難しく、換金できない状況でした。対して、生命保険は契約者の思い通りに確実に換金はできるのです(ただし、早期の解約に対しては、解約返戻金が貯まらない場合もあります)。

 このように、不動産投資と保険のメリット・デメリットを十分考えてバランス良く活用することで、企業経営のリスクに備えることができます。これを機会に一度、所有不動産と保険契約の確認をしてみてはいかがでしょうか。

<プロフィール>
玉井 省吾(たまい・しょうご)
1965年生まれ。長崎出身。88年、福岡シティ銀行入行。県内外の支店に勤務し、中小企業の法人営業を担当。事業者に対し、事業融資、経営アドバイスを行う。99年、外資系保険会社に入社し、ライフプランナーとして勤務。その後、保険を活用した経営コンサル業を開始。2018年1月より現職。(株)アンツインシュアランス 代表取締役社長。

 

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