2024年03月19日( 火 )

Park-PFIによって都市公園はどう変わるか?(前)

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 2017年6月、「Park-PFI」(公募設置管理制度、以下、P-PFI)が施行された。自治体が管理する都市公園内などで、民間事業者が飲食店や売店などの収益施設などを整備運営するとともに、施設からの収益の一部を活用し、公園施設の整備改修などを行うスキームだ。都市公園での官民連携の手法としては、これまでも「設置管理許可制度」があったが、設置期間10年や建蔽率2%などの制限があった。P-PFIでは、設置期間20年・建蔽率12%に緩和され、民間ノウハウを生かせる制度設計になっている。

 18年7月、P-PFIの初適用案件として、北九州市の勝山公園内でコメダ珈琲店がオープンした。福岡市内でも、福岡県が管理する天神中央公園や大濠公園、国が管理する海の中道海浜公園などでP-PFIの導入が進められている。P-PFIとはどのような制度なのか。メリットや課題は何か。勝山公園の事例取材などを基に、整理してみた。

深刻化する公園の公園施設の老朽化

コメダ珈琲

 都市公園は、道路や港湾などと同じ公共インフラだ。インフラとしての押し出しは弱いが、地域住民の憩いの場のほか、子どもの遊び場、災害時の避難場所などの機能を有しており、都市生活者にとって必要なインフラだといえる。

 1972年の「都市公園等整備緊急措置法」の制定以降、全国で急速に整備が進行。国土交通省(2016年度末時点のデータ)によれば、全国の都市公園の数は10万8,128カ所、面積は約12万5,423haに上り、その多くは自治体が管理している。国民1人あたり10.4m2の計算になる。都市公園法施行令では「住民1人あたりの敷地面積の標準は10m2」(第1条の2)と定めており、この基準は一応クリアしていることになる。

 都市公園を維持するには、草木や芝生の手入れ、遊具やトイレ、舗道の補修など、公園施設の定期的なメンテナンスが必要になる。相応の費用も必要になるわけだが、すべての公園のメンテナンスまで手が回らない事態が生じ始めた。公園管理者は、イベントなどの利用料や占用料を徴収できるが、費用を賄うには足りない。道路などに比べると公園は、優先順位が低く、予算取りが難しい。今後、公園施設の老朽化が深刻化する見通しとなっている。面積拡大を求め、急速に整備したツケが回ったかたちだ。

一長一短状態の公園管理官民連携スキーム

 官民連携による公園管理の手法としては、従前から指定管理者制度、設置管理許可制度、PFI事業などがある。指定管理者制度は、公園全体の管理を委ねるスキーム。設置管理許可制度は、公園内の施設の管理、設置を許可するスキームという違いがある。同じ公園で、公園全体を管理する事業者と公園施設(売店、飲食店など)を管理設置する事業者が異なる場合もある。PFI事業は、公園内の水族館など、独立採算可能な大規模な施設での導入事例がある。

 指定管理者制度は、全国の都市公園のうち、約12%以上(15年度末)で導入済み。利用者のサービス向上、維持管理コストの削減などのメリットがあるが、指定期間が3~5年と短く、事業者にとって、長期的な投資をしづらい面がある。設置管理許可制度は、大濠公園にスターバックスコーヒーが出店するなどの事例があり、利用者のサービス向上、賑わいの創出に一役買っている。店舗の建蔽率が公園全体の2%に制限されるほか、設置期間も最長10年となっており、事業者には投資回収への不安が残る。

 いずれのスキームも、利用者のサービス向上には資するが、老朽化が進む都市公園への民間投資を促すものではない。公共インフラである都市公園のなかで、事業者が収益を上げる一方、その一部を公園整備費用に還元する仕組みが必要だ。そこで創設されたのが「Park-PFI」(公募設置管理制度、以下、P-PFI)だ。

(つづく)
【大石 恭正】

(後)

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