2024年03月19日( 火 )

天神から大濠へ移転計画「新・福岡県立美術館」(前)

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須崎公園から大濠公園へ

福岡県立美術館

 約1万点にのぼる収蔵作品を通じて鑑賞体験の機会を提供し、芸術活動の活性化や文化の醸成に寄与している福岡県立美術館(以下、県立美術館)。前身となる図書館と美術館の併設施設「福岡県文化会館」は1964年11月にオープンしており、50年以上の歴史を有している。

 県立美術館の核となるのは、江戸時代に黒田藩御用絵師を務めた尾形家で守り継がれた「尾形家絵画資料」(福岡県指定文化財)や九州古陶磁(久我コレクション)、近現代工芸などのまとまったコレクション。多彩な展示会も開催しており、国内外の優れた作品を紹介するものから、県民の創作活動の発表の場となる「福岡県美術展覧会(県展)」や、地域住民も参加する移動美術館展など、県の美術振興にも貢献している。

【福岡県立美術館】
所在地 :福岡市市中央区天神5-2-1
構 造 :RC造地上4階建て(本館)/SRC造地上7階建て(収蔵庫部分)
敷地面積:5,645.95m2(福岡市から無償借受)/延床面積:6,929.08m2

 その県立美術館だが、築50年以上が経過し、施設の老朽化が進行。安全性への危惧や、作品保存に必要不可欠な空調設備・照明設備の機能低下による適切な温湿度の維持が可能なのかどうかが、懸念材料となっている。また、収蔵庫の面積が狭いこともあり、収蔵作品・収蔵資料の受け入れに制限がかかること、専用の貸展示室スペースが確保できないことで、県民に対して十分に展示室を提供できないことなどが課題となっていた。

 このほか、そもそも文化会館として誕生した躯体のため、美術館仕様にはなっていないという問題があった。天井高の低さに起因する大型作品の展示の困難性、構造上の関係で各展覧スペースまでの動線が複雑になってしまう点などが例として挙げられる。バックヤードスペースにも余裕がなく、作品の搬入経路の不便さ、そこから来る搬入作業時間の長時間化、さらには、ユニバーサルデザインの採用が進んでいない現状がある。

 こうした「老朽化の進行」や「狭隘化による問題」などへの対応として、建替えが検討されていた県立美術館だが、2020年1月、現在の須崎公園敷地内から移転し、新たに大濠公園内に建設することが決定した。

建設予定地

大濠公園の利点と期待感

 移転・新設にともない県立美術館は、大型の作品も展示できる面積と天井高を有し、全国規模の公募展や特別展が開催可能な面積の展示室などが整備された美術館へと生まれ変わる。その実現のために最低限必要だと算定された延床面積が約1万3,000m2。また、作品の安全な移動、車いす利用者等のスムーズな動線確保などの観点から、新・県立美術館は2階建てで計画されている。

福岡武道館

 ただし、現地(須崎公園)で建替えを行う場合、建築面積は3,500m2程度しか確保できず、建築物は4階以上の高層となってしまうことから、前述の条件を満たすことは困難だ。旧・県立美術館の課題を解消し、県の新たなランドマークとして、誰もが気軽に立ち寄れる美術館として再誕させるには、適した場所への移転・新設が必要だったといえる。

 「交通至便で人が集まりやすいこと」「ほかの文化施設などとの連携による相乗効果を生み出すこと」などの諸条件も提示され、最終的に右記の7つの場所が建設候補地となった。

【建設候補地】
(1)天神中央公園
(2)東公園
(3)大濠公園(福岡武道館および日本庭園の一部)
(4)九州大学箱崎キャンパス跡地
(5)貝塚公園
(6)春日公園(噴水池)
(7)九州国立博物館南側駐車場

(つづく)

【代 源太朗】

(中)

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