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原子力安全・保安院の欺瞞 伊方原発事故申告者への対応(中)
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2009年3月31日 13:57

原発の安全性を確保すべく原子力安全・保安院は、原発への立ち入り検査のみならず、関係者の内部告発を含めた事故、トラブル情報を収集。申告内容に応じて調査したものについては、調査結果を公表している。それが電力会社を擁護するものなら何のための組織かを問われる。

原発、消化装置の重要性

 元荏原製作所四国支店の本田省吾氏(63)が、長年、胸に秘めていた四国電力伊方原発での事故を保安院へ通報したのは2006年の秋だった。報告したのは同原発3号機が建設中の92年11月に起きた火災についてである。四国電力(以下、四電)から3号機の消火装置を受注した荏原製作所(以下、荏原)は、電動モーター駆動とバックアップ用のディーゼルエンジン駆動の2機の消火ポンプを据え付けたが、その現場における工事責任者が本田氏だった。

 火災は設置を終えた消火ポンプの試験中に起こった。本田氏によれば、テストは四電と本田氏ら荏原側、双方合わせて7~8人で行なわれた。そして1機目のモーター駆動ポンプの試運転が無事終了。2機目も同様に、約1時間試運転して異常がないため、操作盤の停止ボタンを押したが止まらない。おかしい、と思った瞬間、ポンプと操作盤をつなぐ電気ケーブルが発火。  「消火器でいったん消火したものの、エンジンが動いているので、またすごい勢いで火が噴き出した。操作盤とバッテリーを繋ぐ配線そのものをペンチで切断してポンプのエンジンを停止。発火を止めて消火器でケーブル火災を消しました」(本田氏)。  これがいかに深刻な事故であったか。消火ポンプが設置されたのは、原子炉建屋とタービン建屋という原発中枢の建物から数百メートル離れた純水装置のある建物。純水とは真水のことである。

 北九州から伊方原発のある佐多岬、松山辺りまでの一帯は、日照りが続くと水不足に悩まされる地域。ところが原発は大量の水を必要とする。冷却水と呼ばれる核燃料を冷やし、タービンを回す蒸気は真水でなければならない。これら原発内を循環する真水は配管を通して二次冷却水、伊方原発タイプでは三次冷却水という膨大な水で冷やす必要があるが、これらは川水でも海水でもよい。大型河川のない日本では原発すべてが海岸に立地されるのもそのためだ。

 しかし、問題は真水だ。伊方にそんな水があるわけもなく、原子炉内はもとより、タービンを回す蒸気をつくる水もすべて海水をろ過して真水、すなわち純水にしている。万一、原子炉で重大事故が起きたときは、純水を大量に送り込む必要があるため、各原発とも大型タンクに常に純水を貯め込んでいる。事故時にはそれでも足りなくなる恐れがあり、純水装置も原子炉同様に重要施設だ。そこで火災が発生したらどうなるか。装置そのものがおかしくなる可能性がある。  何よりもこの消火ポンプによって原発の心臓部である原子炉建屋、そしてタービン建屋という中枢で火災が発生したとき、各所の消火栓から純水を一斉放水して火災を止める。それが機能しなかったらどうなるか。消火装置の重要性が理解できるはずだ。(つづく)

恩田 勝亘【おんだ・かつのぶ】
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。

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原子力安全・保安院の欺瞞 伊方原発事故申告者への対応(後)

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