今回の債権者で昨年からデベロッパーが次々と倒産していく中でなぜ穴吹工務店に販売し続けたのか数社の経営者に聞いてみた。そのなかには、経営者の苦悩が浮き彫りされたコメントがあった。そのうち明暗が分かれた2社について紹介したい。
■焦げ付きが発生したA社
民主党政権になって公共工事は期待できず、民間ではマンションくらいしか金額の張る工事はありませんでした。当社の昨年の年商は25億円でしたが、今年になって営業社員は小口の数十万単位の受注しか取ってこられません。穴吹工務店は悪いとは認識していましたが、一物件で2,000万円程度の売上が見込めるため、どうしても無理を承知で受注しました。
社員の首を切るか、社員を遊ばして給与だけ払うのか。いろいろ迷いはありましたが、社員を遊ばすよりは利益が薄くても受注量があれば、そちらを選ばざるを得ない状況なのです。また、今まで大きな焦げ付きもなかったものですから、「我が社は大丈夫」と自分に言い聞かせて受注しました。自社、いいえ、自分は特別だと信じて自分に都合のいい解釈をしていました。それが大きな間違いだったことを悔やみます。
今回は1,500万円近い損失がありますが、その分の利益を出すため余分に儲けなければならないのが不安になります
■焦げ付きを出さなかったB社
以前から、小額ですが取引はありました。支払い条件はとくに悪くはなく、あえて言えばお金をまわすために単発で受注していました。今年に入って積極的な受注活動を行なっていなかったのがよかったと思います。とくに倒産までを考えて受注を控えていたわけではありません。運が良かっただけでしょう。
岡山県に本店を置く中国銀行が、穴吹工務店に対し焦げ付きをだした企業に年利1.175%以上(変動金利)、最高5,000万円で7年以内(1年以内の措置も可)返済の緊急融資が発表された。昨年秋口から始まったセーフティーネット緊急融資も最長5年返済から条件変更で最長10年返済に猶予されたが、この不景気で緊急融資の返済原資が確保されるかどうか厳しい状況で、決して楽観できないと愚痴をこぼす経営者もいた。
取材を通じて、政権批判とデフレによる貨幣価値の落ち込みを愚痴る経営者が増えたことは間違いなく、来年度は資金繰りがまったく読めないと悲惨な表情していた経営者の顔が印象に残った。
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