<日立は巨人軍?>
最大の電機メーカーの日立で技術系100人を採用したとする。誰がどう考えても、将来的に期待通りの活躍ができるのは、30人ぐらいである。これはどの企業でも同じ割合だ。
では、残りの70人はどうしたら良いのか。昨今、マスメディアの誤った転職ブームに乗せられ、3年ぐらいの内に転職していく人もいる。彼らは勘違いをしているだけで、どこに行ってもダメな人材なので論外だ。マスコミに煽られているだけ――。誰が考えたって、即戦力採用でなく、研修期間が長い日本の企業で、わずか3年で自分と企業や職種の相性などわかるはずがないのだ。ほんとうにその程度のことさえわからないのは実に情けない。
人材紹介会社の売上のほとんどがこの年代である。実に困ったものだ。人材紹介会社にとって、この年代には、友達感覚さえ保てていれば、コンサルティング能力を必要としないので楽だ。肝心の企業も、この年代であると安心して受け入れる。一体、何を考えているのか。
ここで考えたい問題は、その日立で10年、15年を経て働き盛りになった人材のキャリア形成のことだ。日立内の事業部縮小・売却とか、新技術重視による方向転換のために専門の技術が生かせなくなった場合だ。実は、業界ではよく知られていることだが、その技術者が優秀であればあるほど、横の大企業への移動は、まったくと言っていいほど日本社会ではできない。これは、業界を問わず技術者共通だ。もちろん、電機業界のすべての大手企業に当てはまる。
あれほど、30才前後までは、人材の考えが間違っていると気づいても、技術者であれば、気軽に引き受けていた大企業が手のひらを返すのだ。
理由は、他社に移られると、技術漏洩になるとか、人材流出になるとか(これは担当上司の社内評価が悪くなるからに過ぎない)などで、そこに「国益」とかの判断基準は出てこない。他国の企業に、売却、M&Aをするほうがより技術漏洩につながると思うのだが・・・。
どういうわけか、相手企業も受け入れてくれないから不思議だ。それは、暗黙の了解事項として、同業なのでとか、同じ仕事をする担当者がすでに社内にいるのでとか(その担当者は転職を希望する候補者よりレベルが低いことが多いのが実情だ)組合がうるさいからとかいう理由だ。
このやり取りのなかにも、「国益」という言葉はおろか「人材の適材適所」の言葉もない。結果、多くの場合、飼い殺しになっていく。
巨人軍もドラフト、トレードを含めて人材の宝庫だ。しかし、どのチームでもエースは1人だし、4番も1人しか必要ない。他のチームでは、4番を打てる選手も、何らかの理由で、機会に恵まれずに、飼い殺しになるケースがあることは、皆さんご存じのとおりだ。
しかし野球は、曖昧さを多く残す企業の人事評価と違って、数字がすべてなので、まだましかも知れない。野球界の「発展」を阻害することは間違いないが・・・。
わかりやすく、企業名「日立」を例に説明してきたが、優秀な技術者を抱える大手電機メーカー、どこも基本はまったく変わっていない。
【富士山 太郎】
<プロフィール>
富士山 太郎 (ふじやま たろう)
人材紹介、ヘッドハンティングのプロ。4,000名を超えるビジネスパーソンの面談経験を持つ。紹介する側(企業)と紹介される側(人材)双方の事情に詳しく、各業界に幅広い人脈を持つ。
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