12月1日に、例年より2カ月遅れで新卒の就職活動が開始した。一流・有名企業入社を志す学生にとっては、相変わらず狭き門だ。それにしても、最近の週刊東洋経済「親と子で勝つ就活」という特集記事にはさすがに驚かされた。
「不安解消ビジネスもここまで来たか」という感じである。就職には、語学が必要(英会話、中国語会話学校)、資格が必要(公認会計士、税理士、弁護士、弁理士などでダブルスクールを推奨)とあおり、最後は親子で就活とはあきれてしまう。売りたいがためとは言え、マスメディアのこのような道義に反する特集はタブーだと思う。逆に社会の病巣を拡げてしまう可能性があるからだ。
民間企業主催の怪しげな「就職対策講座」は大盛況だ。両親も参加する。本来であれば純粋な"精神修養"の場であるべき、「滝行」や「座禅」さえ、商品化、金儲けの手段にされている。両親が費用を負担しているのだ。
親として、自分の息子、娘を心配するのは、100年以上前からの常識だ。たとえ、そうでない親の場合でも、他人がとやかく干渉すべき問題ではない。一生を考えた場合、どちらのほうが良いのかさえ定かでないのだ。
縁故入社は誰でも知っている事実だ。それなりに理由がある。最近は、株主、消費者(騒ぎが大きくなると、自社製品の売れ行きに影響が出る)などが恐いから、カモフラージュしているだけだ。そして、民間企業であるから干渉はできない。
大手の広告代理店は、ほとんどが縁故入社というのは良く知られている事実だ。当たり前だ。親が大会社の広告部長や団体の幹部であれば、10億の仕事だって、「人質効果で、競合なしに受注できるのだ。これ以上、企業にとって効率が良いことはない。受注してしまえば、何とかそれなりにできてしまうのが広告の世界だ。
縁故がなければスタートラインにさえ並べない。究極的に言えば、これが効果的な「親と子の就活」なのだ。ただし、縁故で入社した学生も安泰ではない。何らかの理由で、その縁に支障が生じれば、実力がない者には悲惨な運命が待っている。
どの業界、会社にも似た様なケースは山ほどある。この事実を抜きにして、いかにも別の「成功方程式」があるかのように、親を、子どもを、あおるのはマスメディアの正しい姿勢ではない。
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