ネットアイビーニュース

NET-IB NEWSネットアイビーニュース

サイト内検索


カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

脱原発・新エネルギー

長谷川照・前佐賀大学学長に聞く「安全神話」の上に築かれた「国策民営」の原発は砂上の楼閣(2)
脱原発・新エネルギー
2012年2月 8日 16:00

<内部被ばくと健康障害>

 ――放射能の「安全神話」が続いているという点について、健康への影響をお聞かせてください。

 長谷川 政府は「さしあたり健康にあまり問題はない」と、安全かのように言い続けています。こんなおかしい話はありません。放射線による健康への影響は、外部被ばくによるものと内部被ばくによるものの2つがあります。

 外部被ばくは、人体の外にある放射性物質から放射される放射線によるもので、主にガンマ線被ばくの健康被害です。放射線は生体組織を構成する原子・分子にエネルギ-を吸収させて生体組織に損傷を与えます。生体に吸収されるエネルギ-が大きいほど損傷は大きくなります。シ-ベルトはエネルギ-量を示す量で、自然放射線に加えて、年間1ミリシ-ベルトの被ばくが危険性を判断する基準値として広く採用されています。政府の見解は年間20ミリシ-ベルト以下ならば居住しても「さしあたり」健康に問題はない、いずれ1ミリシ-ベルトまで除染するからといっていますが、除染の見通しは付いていない。

 一方、放射性物質が人間の体の内部に入ってしまうと、今度はガンマ線ばかりでなく人体内部にすべてのエネルギ-を吸収させるアルファ線、ベ-タ線の影響も表れてくる。東大の児玉龍彦さん、彼は内科医で東京大学アイソトープ総合センター長をやっておられ、いろいろな施設の除染にずっと取り組んでおられる研究者です。去年の7月に国会の参考人として訴えていますが、福島の母親の母乳から放射性物質セシウム137が1リットル当たり2~13ベクレル検出され、驚いたと述べています。2)チェルノブイリで、膀胱がんの前がん状態が起きたレベルだからです。この放射能濃度を単純にシ-ベルトに換算すると、年間の被ばく線量は外部被ばくの基準値に比べて桁違いに小さくなる。内部被ばくの危険性は損傷の様相が外部被ばくとは基本的に異なることを示唆しています。       

 内部被ばくにいたるには、さまざまな経路があります。空気中から放射性降下物、放射性物質を含んだほこりやチリそのものを吸い込む、放射性物質が付着した農産物、あるいは放射性物質が付いた稲わらなどを食べた家畜の肉などを食べることで体内に入る、そして飲料水。政府は、最近になって、飲料水の基準を10ベクレル/リットルにしたけれど、その明確な根拠はありません。

 内部被ばくというのは、体内にどれだけの放射性物質があるかで決まる。しかし、何ベクレル取り込んだのか、その数量は、がんなどの晩発性の障害の発症メカニズムに依存しているため外部被ばく線量の基準値年間1ミリシ-ベルトに相当するものはありません。

<戦争の惨禍と重なる>
fukushima.jpg 長谷川 原発の問題は社会のあり方を変えると思います。変化に富んだ時代が始まります。東北大震災の被災地について、政府でさえ、「復興ではなく、創造だ」と言っています。
 津波に襲われた後の被災地の映像を見たとき、感じたことがあるんです。私は小学1年生のときに千葉にいて、当時は戦争中ですから、空襲から逃げ回った。空襲の後の、何もなくなった広大な焼け野原を見ているんです。ものすごく遠くまで見通せました。東北の被災地の、あの惨状、しかも原発事故による放射能の影響、被害を受けています。そのことが、空襲後の焼け野原、8月6日、9日の広島と長崎の原爆被害に重なったんだ。1945年8月15日の終戦、あのとき日本は変わった。日本は変わる、変わらなければいけない。それが、僕のこの問題の最初の印象なんです。

 政府は、原子力規制関連法案を決定したが、原発の運転期間を当初「40年」として、その後20年延長できるといった。国民は政府の見識のなさに怒った。これが世論です。
 「アラブの春」や「ウォール街を占拠せよ」など、世界で"暴動"が起きているのに、日本では起きてないといわれますが、そうではないと思います。2年半の間に首相が3回変わる。これは、"革命""暴動"が起きたということです。
 僕たちは、戦後、国が一時的になくなったなかから立ち上がってきた。希望ある社会を示していかないといけない。原発問題は、そのきっかけになる。電力会社は日本経済基盤の根幹にあるわけで、原発推進してきた「原子力ムラ」を壊すとその影響は全体におよびますよ。

2)児玉龍彦 内部被曝の真実(幻冬舎新書 2011.9刊行)

(つづく)
【山本 弘之】

≪ (1) | (2) ≫

<プロフィール>
hasegawasi_p.jpg長谷川照(はせがわ・あきら)
 京都大理学博士。専門は、原子核理論。佐賀大理工学部教授、理工学部長等を経て、2003~2009年度、佐賀大学学長。佐賀大学長として、海洋エネルギー研究センターの全国共同利用化、有明海や地域学の研究拠点づくり、アジアの大学との学術交流で国際化に尽力。現佐賀大学顧問、日本物理学会会員。




*記事へのご意見はこちら



*記事へのご意見はこちら


※記事へのご意見はこちら

脱原発・新エネルギー一覧
脱原発・新エネルギー
2012年12月 7日 16:00
脱原発・新エネルギー
2012年10月31日 16:30
コダマの核心
2012年10月30日 11:00
脱原発・新エネルギー
2012年10月 9日 11:23
脱原発・新エネルギー
2012年9月27日 10:04
脱原発・新エネルギー
2012年9月27日 07:00
クローズアップ
2012年9月26日 12:00
脱原発・新エネルギー
2012年9月25日 17:23
NET-IB NEWS メールマガジン 登録・解除
純広告用レクタングル

2012年流通特集号
純広告VT
純広告VT
純広告VT

IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル