飲食品に含まれる放射線量を測定する「放射能市民測定室・九州」が２月10日、福岡市で設立された。福島第一原発事故による飲食品の放射能汚染が懸念されるなか、市民らの依頼を受けて測定するもの。愛称は、「Ｑベク（キューベク）」。市民や関東から避難してきた人たち約30人が2011年10月から準備してきた。

　中村肇代表（自然食品販売の株式会社スロー風土社長）は、「命のもとである食べ物が放射能に汚染されている。とくに子どもたちには本来ゼロベクレルのものを食べさせたい。国や行政に頼らず市民自らが測定し、見えない放射能を見える化することが、安全を守るうえで大事だ」と語った。

　Ｑベクでは、消費者だけでなく、生産者や食料品小売店たちの利用も期待している。また、企業や生産者との連携、情報発信・勉強会も行う。
　測定室長の木村京子氏は「生産者といっしょに、なぜこうなったのか、どうしたら乗り越えられるか考えていく測定室にしたい」と述べた。
　依頼された食品のほかに、牛乳など重要な飲食品についてできるだけ精度の高い検査を定期的に行い「定点観測」していく計画も明らかにした。

　Ｑベクによると、市民測定施設は、全国で49カ所（11年12月末時点）。関西以西では、市民測定施設の設立は初めて。
　明治製粉ミルクの放射性セシウム汚染がわかったのも、福島の市民測定室が食品検査で気づき、株式会社明治へ連絡し、同社が自主検査したためだったという。Ｑベク広報の本河知明氏は「市民測定室の役割は大きい」と話す。

　測定結果は基本的に公表を予定。高い線量値が検出された場合は、依頼者に結果を伝えるとともに、入手先、生産者等と対話し、より精度の高い測定を促すなど、連携・交流しながら、可能な対策を講じる考えだ。

　設置する測定機は、応用光研工業社製「FNF―401」１台。放射性ヨウ素131、放射性セシウム134、同137を別々に検出でき、検出限度値は１キログラムあたり10ベクレル（１検体あたり測定時間1,000秒の場合）。価格は約450万円。
　測定機は現在納品待ち（４月末～５月上旬予定）のため、測定活動開始は５月を予定。Ｑベクは、測定器購入費、測定室の事務所・改装費用など500万円を市民からの募金でまかない、その後の維持運営費は測定料金をあてる予定。「九州の市民のみなさまに設立の支援をお願いしたい」と募金を呼びかけている。

　測定には、崎山比早子・元放射線医学総合研究所主任研究官、藤田祐幸・元慶応大助教授らが顧問となり、測定結果の読み取り等を定期的にチェックする計画だ。

　測定の対象は、九州地域で入手できる水、食品。申込・予約受付後、検体を持込または宅配便で受け取って測定し、結果を説明・送付。検体は返却する。土壌、落ち葉、焼却灰など飲食物以外は対象としない。依頼は、個人だけでなく、団体企業からも受け付けるが、同一の個人・団体企業から月３検体までとしている。

　料金は１検体あたり、一般個人持込3,000円、同宅配便4,000円、団体企業持込5,000円、同宅配便6,000円（いずれも送料は依頼者負担）。１検体あたり１キログラム（１リットル）の量を推奨、依頼者側が細かく裁断しておく。測定予約は１時間単位。
　また、ガイガーカウンター（空間放射線量測定機）の貸し出しを行っている（１泊２日１０００円）。

　事務所は、福岡市東区水谷２-11-36（JR・西鉄千早駅徒歩３分）。営業時間は当面午前１０時～午後４時（土日休み）。電話092-410-4516（ファクス兼）。

　募金の振込先は、ゆうちょ銀行01700-0-71535。他行からは一七九店（店番179）当座0071535。加入者名「放射能市民測定室・九州」。１口、50,000円、10,000円、3,000円。

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