福島で被災後、福岡に移住し「原発なくそう!九州玄海訴訟」の弁護団に参加している弁護士がいる。北九州の清和法律事務所に籍を置く斎藤利幸弁護士がその人だ。最悪の原発事故により愛する故郷を追われ、新天地にやってきた同氏。3.11からこれまで、そして今後について話を聞いた。
――脱原発の声が国民からあがる一方で、電力会社のみならず政府も原発再稼動に向けて動き出しているように見えます。
斎藤 このままではまた事故を起こします。そうなれば、大げさでなく日本は終わりだと考えています。震災以降、地震も活発に発生していますし、即停止するしか道はありません。チェルノブイリ原発事故の5年後に、ソ連は崩壊しました。もちろん、その要因は政治状況などさまざまですが、あの事故がその一因であることは疑いようがありません。繰り返しますが、もう一度事故が起きたら日本は沈没です。住むことさえできなくなります。
――政府の被災地に対する復興支援が十分でないという声もあります。
斎藤 野田総理は就任直後「福島の復興なくして日本の復興なし」とおっしゃっていましたが、実際には政府は福島を見捨てていると感じます。とても放射線量が高いにも関わらず、子どもたちがそのままになっています。県は県で、県民が避難してしまうと自治体として成り立たなくなるので、住んでもらわないと困るという発想です。つまり、住民の命よりも、自分たちの立場を考えているのです。全県避難となれば、実際には金がかかるから救えない。このような状況を考えれば、住民がすでに捨てられているということは明らかです。ただ、これを救える人たちがいます。それが、国民です。国民一人ひとりが立ち上がり、避難者を受け入れるなどの手助けをする。そういう協力を求めたいと思います。また、こうした活動をすることによって国が間違っていることや、国からの救済が期待できないことが明らかになるとはずです。国民全員が問題を認識するために、国民運動を先行させなければなりません。また、いずれは国が救ってくれるとか、東電がこのまま何もしないなんてことはないだろうとか、いまだに思っている人が多いのです。そういう幻想は捨てて自分たちでやっていく時期がきています。日本の国民は誠実だと言われていますが、その誠実さが食い物にされているのです。
――ところで、今後は弁護士として福岡を拠点に活動されていくわけですが、これまではどのような案件を扱ってこられましたか。
斎藤 いちばん比率が高いのは交通事故で、5割以上はこれになります。交通事故では、事故当時は加害者の立場だったのに、事故後、一方的に被害者側から責められて、被害者になってしまうケースが少なくありません。最初は偶然請負ったのですが、次第に多く依頼されるようになっていきました。しかし、交通事故のみに限らずどんな案件でも受け付けています。離婚問題など、身近な問題でも気軽に相談していただければと思います。
――最後に3.11でいちばん変わったこと。それから、今後についてお聞かせください。
斎藤 震災前、福島にいたときは、あまり地域住民のかたと交流する時間が持てませんでした。しかし、福岡に来てからは親切で素敵な人々に助けられ、そういう触れ合いの大切さを再認識しました。実際、遠賀郡を選んだのも、そういう暖かさに触れたのが大きな理由になっています。それから、福島など東北から避難して来ている人は多いと思いますが、なかなか出会う場がありません。このようなネットワークは是非構築したいと思いますし、同郷というのは良いものです。ぜひ、メールでも結構ですから、お気軽にご連絡いただければと思います。助け合って生きていきましょう。
最後に写真が趣味という斎藤弁護士が撮影した、福島の風景写真を掲載します。この美しい土地が原発事故による放射能汚染という未曾有の大事故にさらされ、政府の「冷温停止状態」宣言はさておき、まだ収束の目処が立ってない事実と我々は向き合わなければなりません。
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■清和法律事務所 斎藤利幸弁護士
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