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宇宙船「地球号」、嶋矢志郎船長に聞く!~3.11が「地球市民」に教えたものは...(後)
脱原発・新エネルギー
2012年4月17日 11:05

<初めに自然ありき>
 ――前回、究極のキーワード「エシカル」という言葉を教えて頂きました。いつ頃からこの言葉を提唱されておられるのですか。

 嶋矢志郎氏(以下、嶋矢)  私が具体的にエシカルという言葉を使いだしたのは、2007年に地球環境財団の理事長に就任した時になります。エシカルという言葉自体はここ数年で入ってきたもの(英国のブレア首相が最初に使っています)ですが、実はエシカルの心と精神は、私たちの先人が何千年も前から崇めてきた価値観の一つなのです。

 自然観としては「自然融和」型です。これに対する言葉に、西側諸国に顕著にみられる「自然対峙」型があります。「自然融和」型の代表は日本と考えています。先祖代々自然と、環境と、地球と上手に付き合ってきています。
 しかし、明治維新と第二次大戦後の2度にわたり、外来文明の影響を強く受け、温故知新を忘れかけました。その代償が現在の環境問題といえます。

 エコ認識として、巷でよく言われる"エコ"との差別があります。エコロジーという概念には大きく分けて二つあるのです。
 浅いエコ(Shallow Ecology)と深いエコ(Deep Ecology)です。浅いエコでは、人間の都合に合わせて環境に配慮します。自然と対峙することも多く、「エコ疲れ」という不可解な現象が起こります。一方、深いエコは、日本の伝統的な融和型の自然観に基づくエコ認識のことを言います。
 「初めに自然ありき」で、人間が自然を畏れ、敬い、倣い、随って、共生し、調和し、溶け合って生きていくことです。

 ――3.11を通して、自然が我々に教えてくれた今こそ、パラダイムシフト(価値観の転換)をしなければいけない時なのですね。

 嶋矢 そうです。物質文明の論理と作法はすでに行き詰っており、閉塞感を強めて、末期的な症状を呈していると言えます。

 何のためのエシカルかを、私は次の3点で考えています。

 一つ目は地球の健康を保全する為です。
 地球上の総人口は、世界人口白書によると、今年で70億人、2050年には93億人になると言われています。一方、耕作可能な農地面積は急速に進む森林破壊と都市化で既に限界に達しています。

 二つ目は私たち人間の心身の健康を保全するためです。
2050年はそう遠くない未来ですが、93億人分の胃袋を始め、衣食住全体の総需要を誰が、どの様にして養い、賄うのかも見えていません。

 三つ目は社会の健全化、公序良俗を保全するためです。
人間一人ひとりの慈しむ心の欠落や感性の劣化、創造的多様性の欠如などが社会の秩序を乱し、公序良俗の保全とその醸成を疎外しかねないからです。

<国益から地球益へ>
 ――日本はエシカル先進国として、世界をリードして行けるでしょうか。
  
 嶋矢 思えば、3.11は私たち人間に対し、図らずも地球とは何であり、自然とは何であり、環境とは何であるかを、無言のうちに「こういうものだ」と教えてくれました。

 そして、これらは全て、日本で起こりました。我々は、今「日本国民」としてはもちろんですが、「地球市民」として、このエシカルの概念を、世界に伝え、世界をリードしていく宿命を感じないといけません。環境問題は"国益"の枠を超えて"地球益"の時代になったと言えるのです。

 私は今、夏目漱石の至言である「則天去私」の教えを思い起こしています。元来、「則天去私」は日本人の精神風土を醸成してきた原点でした。
 自然を敬い、自然に倣い、随い、溶け合うことで、融合型の自然観を大切にしてきました。いのち優先の深いエコ認識の下で培い、育んできた文化・文明とその作法をよかれと崇めて、後世へ継承してきたのが日本民族です。

 「エシカルライフ」を目指すことは、私たち現代世代が未来世代の為に取り組むべき、地球市民としての地球的社会責任とも言えるのです。私個人としても、その責務を果たしていきたいと思っています。

【記者から一言】

 まさに、宇宙船「地球号」の船長とも言える嶋矢氏のお話は実にエキサイティングなものだった。記者も、刺激を受け、環境問題のバイブル・古典と言われるレイチェル・カーソンの「沈黙の春」を読んでみた。最後の章の冒頭に次のような一節がある。

 「私たちは、今や分かれ道にいる。・・・・・・長い間旅をしてきた道は、素晴らしい高速道路で、すごいスピードに酔うこともできるが、その行きつく先は、禍であり破滅だ。もう一つの道はあまり<人も行かない>がこの分かれ道を行く時にこそ、私たちの住んでいるこの地球の安全を守れる、最後の、唯一のチャンスがあるといえよう。どちらの道をとるのか、決めなければならないのは私たちなのだ」

 これが書かれたのは50年前のことだ。同じ環境問題でも当時と今は内容が違う。しかし、自然との関係で問われていること、自然と対峙するのか、融合するのかは同じだ。再度、この一節を、読者、日本国民、地球市民のみんなで考えてみたい。

【金木 亮憲】

≪ (前) | 

<プロフィール>
嶋矢 志郎
ジャーナリスト・文明評論家
1961年早稲田大学政経学部卒。記者職として日本経済新聞社に入社、論説副主幹、論説委員を経て、大学教授に転じ、広島市立大学国際学部、大学院国際学研究科教授兼教学部長兼評議員、芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科教授、同大学院先端工学研究機構客員教授を歴任。2007年から(財)地球環境財団理事長。専門は、地球社会論、現代文明論、環境共生論、環境経営論、CSR論。著書、論文多数。


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