反原発活動を長年にわたり続けてきた田中優氏は、節電と自然エネルギーを活用した「原発に頼らない社会」を提言し、全国各地で精力的な講演活動を続けている。NET-IBでは今月より同氏による連載コラムをスタートするが、その前に同氏が5月5日に配信したメールマガジンの内容を紹介する。
<「偽装停電の夏」をくいとめよう>
5月5日の今日、北海道電力の泊原発が停止し、42年ぶりに原発の稼働していない日を迎えた。うれしい日に申し訳ないのだが、この先の不安を伝えたい。
ぼくとしては珍しく、拡散してほしい話だ。何かというと「偽装停電」の不安だ。市民が「原発なしでも電気は足りる」と言っている最中、停電させるのは「やっぱり原発が必要なんだ」というPRに使える。電力会社と政府は、去年も「計画停電」を偽装した。
その前に「需給調整契約*」を使って大口契約者の電気を止めれば足りたのに、それをしなかった。しかもピークの出ない土日や平日の夜間、街路灯まで消した。
これは偽装だろう。そこまでする人たちが、この「原発は不可欠」と訴えたいこのタイミングを逃すだろうか?
もともと家庭の電気消費は少ない。2010年で年間わずか22%にすぎない。しかも足りなくなるのはピーク消費のある、ごく一時的だけだ。ピーク時の「夏場・平日・日中」は、家庭の三分の二は不在で、ピークの電気消費に対する家庭消費の割合は1割にすぎないのだ。だからそもそも家庭の問題ではない。節電すべきなのは事業者なのだ。
しかし大阪市の橋下市長はすでに、「産業には影響を与えず、家庭に冷房の温度設定など負担をお願いすることになる。安全はそこそこでも快適な生活を望むのか、不便な生活を受け入れるか、二つに一つだ」と話し、大飯原発3、4号機を再稼働の問題を、人々のライフスタイルの問題にすり替えている。それは橋下が2月に経産省や民主党幹部と隠密裏に意見交換した後のことだ。とっくに橋下は心変わりをしている。
偽装停電させれば、人々の「原発必要神話」は復活する。なんとステキなプランだろうか。電気消費の半分を占める上位200社は守られて、中小零細では停電して、コンピュータの重要なデータを失う。しかし原発で豊かになるのは200社の側なのだから、これは魅力的な作戦ではないか。
ぼく自身、その問題があるので、無制限に「原発なしでも電気は足りる」とは言って来なかった。「こうすれば足りる」と、具体的な節電策やら料金設定やらを提案してきたのはそれが理由だ。日本の電力業界は信用に値しない。日本でなら偽装は可能だと思う。他の先進国よりはるかに情報が公開されておらず、昨年の「計画停電偽装」の実績もあるのだ。日本で隠し通せる可能性は高い。
*「需給調整契約」とは、大口企業の電気代を割安にする代わりに、電力需給がひっ迫した際に、電気利用の削減義務を負う契約。具体的には数時間前に連絡を受けて、工場を止めたり、冷房を切ったりする義務を負う代わり、電気料金を安くしてもらう契約。
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<プロフィール>
田中 優 (たなか ゆう)
1957年東京都生まれ。地域での脱原発やリサイクルの運動を出発点に、環境、経済、平和などの、さまざまなNGO活動に関わる。現在「未来バンク事業組合」「天然住宅バンク」理事長、「日本国際ボランティアセンター」 「足温ネット」理事、「ap bank」監事、「一般社団 天然住宅」共同代表を務める。現在、立教大学大学院、和光大学大学院、横浜市立大学の 非常勤講師。『シリーズいますぐ考えよう!未来につなぐ資源・環境・エネルギー①~③』(岩崎書店)、『原発に頼らない社会へ』( 武田ランダムハウス)など、著書多数。
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