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百の診療所より一本の用水路~「ペシャワール会現地活動報告会」開催
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2012年6月 4日 15:12

0604_nakamura.jpg パキスタンやアフガニスタンの支援活動を行なっているNGO団体ペシャワール会の「現地活動報告会」が、6月2日(土)に開催され、会場となった西南学院大学(福岡市早良区)のチャペルには、多くの人々が訪れた。
 「ペシャワール会」は、中村哲医師のパキスタン・アフガニスタンにおける活動を支援するため、1983年に設立されたNGO団体。福岡市内に本部を構え、現在はアフガニスタンでの医療活動、水源確保活動、農業支援活動などを行なっている。
 中村医師は九州大学医学部卒後、国内での病院勤務を経て、84年よりパキスタンのパクトゥンクワ州の州都であるペシャワールに赴任し、主にハンセン病の治療に従事。86年より同国内のアフガン難民への診療を本格的に開始し、医療を通じて多くの人々の命を救ってきた。
 しかし、医療だけの活動で難民を救うことに限界を感じ、「飲み水と食料の確保、ひいては農業用水を確保することこそ、人々の難民化を防ぐ」「百の診療所より一本の用水路」との思いから、2000年頃より水源確保事業にも着手。02年からは「緑の大地計画」として、かんばつ対策のための水源確保(井戸や用水路の掘削)や農業指導などにより農地の復興を進めるとともに、難民の帰還を想定した長期的な農村の復興事業を展開し、現在に至っている。
 報告会ではまず、同会会長の後藤哲也氏が挨拶。続いて同会のDVD上映が行なわれた後、中村医師が登壇した。

0604_dvd.jpg0604_iriguti.jpg

 中村医師は、「私は現在、聴診器の使い方は忘れてしまいましたが、重機の使い方は上手になりました(笑)」などとユーモアを交えつつ、これまで同氏および同会が行なってきた活動を振り返りながら、講演を開始。なかでも、計画・構想から開通に至るまで03~10年の8年間をかけて行なった「マルワリード用水路」事業の報告について、多くの時間を割いた。
 マルワリード用水路は、全長25.5kmにもおよぶ長大な灌漑(かんがい)用水路で、直接灌漑面積は約3,000ha。完成に至るまでにかかった費用約12億円は、すべて日本で集めた寄付金でまかなわれている。
 なお、用水路をつくるにあたって、重要視したのはその工法。いくら最新の技術を導入して用水路を完成させても、その後、現地の人々が自ら管理や修理・改修を行なえなければ意味はない。「大事なのは自然をねじ伏せることではなく、自然と"ケンカ"しないことです」(中村医師)との考えで取り入れたのは、江戸時代の日本で開発された石づくりの工法。そこで、筑後川の山田堰(福岡県朝倉市)で使われている"斜め堰"や"柳籠工"、"蛇籠工"などの技術を参考に、用水路を完成させた。この用水路の完成によって、約15万人分の食料生産が可能になったという。

0604_yousu.jpg 「現地の方々の願いは2つです。1つは、家族とふるさとで暮らすこと。もう1つは、三度三度のご飯が食べられること。この願いは、世界中で共通しています。"天の利"、"地の利"、そして"人の和"――そういったことを大事にしながら、これからも現地での活動を続けていきます」と、中村医師は講演を締めくくった。

 その後、設けられた質疑応答の時間では、会場から次々と挙手が。時間内に収まりきれないほど多くの質問および感想が投げかけられ、その1つ1つに中村医師は丁寧に答えていった。
 なかには、「中村医師こそノーベル平和賞にふさわしいと思います」との意見も飛び出し、その瞬間、会場内では大きな拍手が沸き起こった。ただ、その意見に対して当の中村医師本人は、「そういったものをいただくと仕事がしづらくなりますので、とくに興味はありません(笑)」と会場の笑いを誘っていた。
 質疑応答中、「アフガニスタンの地から見て、今の日本の現状はどう思われますか」との問いに対して、中村医師は「日本人は優秀ですし、日本が技術立国であることは間違いありません。ただし、日本人は良くも悪くも平和的であり、権力に弱い面があります。また、『景気さえ良くなればバラ色の未来が約束される』『武力さえあれば身を守ることができる』といった"迷信"がいまだに深く根を下ろしている感があります」と苦言を呈したうえで、「日本人としての"心意気"を強く持って、しっかりと頑張っていきましょう」と投げかけた。

 中村医師の講演後、休憩を挟んで同会のワーカー2名が活動報告を行ない、その後、今回の活動報告会は盛況のままに終了した。

 『誰もが押し寄せる所なら誰かが行く。誰も行かない所でこそ、我々は必要とされる』――との強い想いで、さまざまな支援活動を行なってきた中村医師およびペシャワール会。活動開始から30年近くが経とうとしているが、当初からの情熱は少しも失われておらず、これからもまた多くの支持者を集めながら、その支援活動の輪はさらに広がっていくことだろう。

【坂田 憲治】


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