※本章はフィクションです。事故が起こった場合の、数多くの可能性の中のひとつを示すものに過ぎません。あしからずご了承くださいませ。
陽動、というと語弊があるかも知れない。より正確にはミサイル実験とタイミングを合わせたD国海軍の一部隊の勝手な侵略、と言った方がよかろう。その勝手な行為が日本を不幸のどん底に導くことになった。
20XX年1月1日、午前9時にD国の人工衛星打ち上げロケットのスタンバイが完了した。スパイ衛星の画像、海上からの監視などにより発射までのカウントダウンが始まったことが告げられた。利害各国は今か今かと固唾を飲んで見守る。午前10時30分、人工衛星を搭載した事実上の弾道ミサイルが発射された。ロケットは白煙を吐きながら上昇、成層圏を突き抜けて弾道飛行に入り、U字を描いて地上に落ちていった。予定落下地点は台湾沖合と予測され、万一の落下物に備えて自衛隊のパトリオットミサイルは補足を続けた。結果、ほんの一部、大気圏で燃え尽きそこねた一部金属片が南シナ海に没することとなったが、パトリオットを発射しなくてはならないような事態には陥らずに終わった。日本国政府、関係各国が胸をなで下ろしていたその時、ひそかに別の動きがなされていたのである。
秋田、福井、島根、長崎の沖合にそれぞれ2、3艘ずつ国籍不明の不審船が発見された。海上保安庁の巡視艇が、それぞれを捕捉、追尾を開始する。どうやらD国の工作船のようだった。巡視艇は領海侵犯をしている、停船せよと拡声器で繰り返し伝えるも、不審船は一向に船を停める様子はない。巡視艇は不審船の進行方向に向けて威嚇射撃を開始した。不審船は黒煙を上げながら、速度を上げて逃げ回る。そして、徐々に日本への距離を詰めるそぶりを見せた。威嚇射撃はさらに続く。不審船は挑発するように速度を弱めたり、加速したりを繰り返す。そして、積荷の一部を海に放り出した。速度を増すために積荷を捨てたのだろうと思われていた。大半はその通りだったが、ごく一部、あえて海に投げ入れた物があった。それは大きなタルのような容器で、その中は水より比重の軽い油で満たされていた。銃器、プラスティック爆弾などの爆薬、信管、発信機、無線受信機、何枚かの紙、タイマーつき電磁弁で封じられた液化炭酸ガスボンベなどが封じられ、タルの上部には逆流防止用の弁が設けられていた。
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