※本章はフィクションです。事故が起こった場合の、数多くの可能性のなかのひとつを示すものに過ぎません。あしからずご了承くださいませ。
<原発破壊作戦実行>
気泡の後、30分程度経った後、1月1日に投げ入れられたタルが4つ、水面に上がってきた。二酸化炭素ボンベにつけられた電磁弁が漁船から発せられた信号を受信し通電、弁が開放されたことでタルのなかに二酸化炭素が放出されて比重の軽くなったタルが浮きあがってきたのである。長い鉤(カギ)のついた棒でタルをひっかけて浮いてきたタルを引き寄せる。漁船はひとつ、またひとつと回収を進め、結局7つのタルが回収された。回収を終えた船は網を打ち、普通の漁船のように魚を採り始めた。同じような回収作業は秋田、福井、鳥取でも行なわれたが、ここでは長崎沖に限って進める。
3日午後4時、タルを回収した船は、何食わぬ風体で佐賀県の波多津漁港に戻った。同船は従来、いわゆる普通の漁船として活動していた船である。したがって、帰港しても誰も何とも思わないのだ。回収作業を終えた漁船の船員は港にいた漁民たちと二言三言あいさつを交わし、いつもどおり魚を水揚げし、いつもどおり帰宅していった。深夜午後11時、船員は船に戻り、軽トラックに回収したタルを載せてアジトへと戻る。タルを開封し中身を確認する。これで準備はすべて整った。
4日、アジトには6人の若い工作員が集まっていた。玄海町の地図と原子力発電所の写真をテーブルの上に広げて、綿密な打ち合わせをしていた。目標は玄海原発にある原子炉の破壊である。打ち合わせは深夜におよび、各自の役割が確認される。決行は翌日5日の午前11時。これは航空機を爆破して以来、最大の作戦であること、国の威信がかかっていることが告げられ、各自引きしまった表情を見せていた。
5日の夕刻、3人の工作員が船で沖に出た。イカ釣りのように装い、灯りをともして港を出、操業しているような行動をしつつ、2人が装備を体に身につけていく。ウェットスーツに身を包み、自動小銃、拳銃、爆薬、信管を防水バッグに入れて背負う。午後10時、玄海町沿岸1kmの海上を工作船は進んでいた。進みながら、2人の工作員は海に身を投じた。工作員は巧みに足ひれを使い、玄海原発に近づいていく。午後11時30分ごろ、玄海原発4号機の西側の岸に2人の工作員が上陸することに成功した。
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