那珂川町が市制施行を目指していることをご存知の読者も多いことだろう。同町は、西鉄バスの車体へのラッピング広告や新聞広告のみならず、武末茂喜町長自身も福岡都市圏の住民に町内への転入を呼びかけてきた。ところが、2010年10月の国勢調査の結果は4万9,785人、市制の基準となる人口5万人にわずか215人届かず、2015年の次のチャンス(市制施行は5年に1回行なわれる国勢調査で5万人以上の人口があることが要件)まで待つこととなった。
今回、惜しくも市制施行を逃したことは痛恨事であった。なぜならば、住民基本台帳上では、10年9月30日の時点で初めて人口5万人を突破し、今後も微増を続けていくかと思われていたからである。10年10月の国勢調査では5万人を割り込んだものの、その後、再び、同町の人口は5万人を超えた。
しかし、今年(12年)7月末の調査では1年10カ月ぶりに住民基本台帳の人口が4万9,986人と5万人を割りこんだのである。これは、自然増をあてこんでいる同町の思惑とは逆に、人口が減少に転じ始めたようにも思える。
現職の武末町長は、市制施行を目指す立場をとっているが、今回の町長選挙の後援会資料では、人口増加策については一切触れていない。ただし、6月議会において、人口が5万人を達成できなかった理由としては、(1)人口増加に特化した施策が不十分、(2)職員全体の意識が不十分、(3)町民へのPR不足などを挙げ、今後は那珂川町人口増加策推進委員会を設置し具体的な取り組みについて検討し、また、町長自ら(転入の)トップセールスを行なっていくと回答している。
一方、森田氏は、最近公表した町政に関する政策集のなかで、「都市計画を見直して人口増を目指します」と記述し、ブログのなかで「このままでは市制施行は無理」と述べている。その理由として、以下のように分析している。
(1)市街地に田畑があるとか、住宅地と指定している地域に住宅開発を誘致するでもなく、都市計画がお飾りに過ぎない。
(2)住宅が建ちそうな中山間地域は、交通アクセスが悪い。
(3)住民意識アンケート調査の結果で、「住み続けたくない」という人が14%いる。
(4)自治体間の人口獲得競争に勝てるだけの分譲住宅を持ち合わせていない。
市制施行は今回の町長選挙の主な争点にならないと言われているが、人口の増減は、町政の課題を考えるための指標となる。とくに町外からの転入者が人口の8割を占める同町においては、今後の町のあり方を考えるうえで決して無視できない要素だろう。市制施行はその結果として考えなければならない。
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