2024年04月20日( 土 )

カリスマオーナー型経営から脱皮し、自立的に動く開発型企業を目指す(前)

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(株)ジャパンシーフーズ

100億円企業への戦略と体制。副社長の陽一氏が執行役を担う

jp2 鯵・鯖を主体とした鮮魚の加工・卸で、量販店ルートを開拓してきた(株)ジャパンシーフーズ。2013年4月には、長崎県対馬の旧つしまCASセンターを買い取り、日本一の水揚げを誇る対馬アナゴの加工も手がける。
 ただ、水産加工業界は国内市場が縮小する一方、卸先のスーパーが鮮魚を値上げしづらいなかで、魚価の変動を直に受け利益が安定しないという課題も抱えている。そんな厳しい環境でも、井上幸一社長は同社を年商100億円企業にする目標を掲げており、中長期的な戦略構築と社内体制の整備は待ったなしだ。それらを具体的に組み立て実行していくのが、今年で入社10年目を迎える後継者・井上陽一副社長のテーマでもある。

 「弊社はこれまで創業者である社長のカリスマ性と強いリーダーシップに引っ張られてきました。社風としては良い意味でも悪い意味でも家庭的な面があります。そうした社風も社長のカリスマ性があってこそのものだと思います。企業規模を拡大していくうえでは、社風の良い面は残しつつ、もっとシステマチックな組織に変える必要があり、それを実現するためにも副社長である自分のカラーを徐々に打ち出していくことが課題だと思っています」と、陽一副社長は冷静に自分の役割を受け止める。

 自身は高度な能力が求められるIT業界の出身でビジネス面では広範な知識を持つ。コミュニケーション能力にも長け、幹部や部下との調和もとれている。後継者として将来的なビジョンを描き、戦略を策定し実行していくうえで、何より井上社長の期待は厚い。目下、陽一副社長は社長の補佐しながら研究室と一緒に新商品やタレを開発したり、社内システムの開発に取り組んだりと、さまざまな業務に携わる。対馬事業についても、徐々に通年での黒字化も見えてきたことで、設備投資に向け補助金を申請するなど、事業欲も旺盛だ。

社内ルールをきちんと決めて、ルールで組織を動かしていく

 陽一副社長は大阪にある中高一貫校で寮生活し、母体の大学に進学した。卒業後はまず東京でSEとして5年間働き、主にメガバンクのシステム構築をする仕事に携わる。その後福岡に戻り、納品先のスーパーや仕入れ先の水産仲卸で修業。06年に同社に入社し、同年9月に関西営業所を開設し営業所長となる。開設当初は1人営業所であったが、3年間の大阪赴任中に単月800万円だった売上を5,000万円に、所員も3名まで増員させた実績を持つ。つまり、井上社長のカリスマオーナー型経営とは少し距離を置いてきており、創業者とは違うスタイル、独自の路線を貫けるメンタルを持つ。
 では、陽一副社長は後継者として、どんな経営を目指し、どんなジャパンシーフーズにしていくのか。それは単純にトップが変わるのではなく、組織全体を少しずつ変えていこうというもの。カリスマオーナー型経営からの脱皮そのものなのである。
 「まず人事評価制度を確立させる必要があると考えます。今は社長1人による査定で、ある程度の規模までならそのやり方が一番効果的だと思いますが、今後は評価制度に基づいた査定に移行する必要があると思います。人材配置についても必要に応じて異動・変更するのではなく、同様にある程度ルールに基づいて実施していく必要があるでしょう。会社という組織のなかにあって、最も大きいと言えるストレスは自分が正当に評価されてないと感じた場合だと思います。基準を作るに至っては、目に見える成果は当然のことながら、目に見えない貢献にも光が当たるようなものにしたいと考えています」(陽一副社長)。

 創業者とそれを継承し発展させていく2代目の素養は全く違う。陽一副社長はそれを十分認識しており、自らはカリスマを目指そうとか、将来のオーナーらしく振る舞おうとかの素振りは全くない。
 SEのスキルを付けたのも、「多くの中小企業は売上に直接寄与しないIT分野に十分な投資ができていない。また、目に見えて誰もが理解できる成果物がつくれると、2代目に拒否感を感じる人が多くいたとしても社内ですんなり受入れられるのでは」との思慮からだ。まずは社員との対話を重視して社内の意見を聞きつつ、自分がやらなければならないことを固めようとしている。

(つづく)

<COMPANY INFORMATION>
代 表:井上 幸一
所在地:福岡市南区井尻5-20-29
設 立:1987年7月
資本金:1億円
TEL:092-593-7662
URL:http://www.jp-seafoods.jp/

<プロフィール>
inoue井上 陽一
1978年9月、福岡市出身。創価大学卒業後、2000年にシステム開発会社CSKに入社。SEとして勤務した後、07年に(株)ジャパンシーフーズに入社。大阪営業所の新設、売上伸長を果たした後、13年に副社長に就任。井上幸一社長をサポートする傍ら、SEのスキルを活かして社内システム構築にも携わる。

 
(後)

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