2024年04月20日( 土 )

中小建設業のM&A事情~「売りたい、買いたい」の背景とは

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office_akusyu M&Aによる企業の買収と売却。上場企業による派手なM&A劇場がドラマとなり、放映されることもしばしば。そんなM&Aが地方の中小企業間でも密かに進んでいる。

 最近、耳に入ってきた事例を紹介していきたいが、前提として「M&Aを成立させることは非常に難しい」というものがある。

 「特に九州は難しい」――そう語るのは、M&Aや事業承継のコンサルタント。同氏はこう話す。「九州の企業は土着性が強い。過去から続く地元でのつながりを重視する傾向にあり、新参者を受け入れがたいところもある。これがM&Aに際しては、逆に働く。買収したい企業と売却したい企業、双方の条件が合致しても、地場同士では妙な意地が働きうまくいかないことが多い。一方で、東京などの企業が買収に手を挙げると、意外とすんなり地場企業は売却にサインする。とは言っても、今は売りが圧倒的に少ない。」

 まずは買収希望側から。あるゼネコンでは近年、建設市場の拡大を受け、業績は絶好調。すっかり過去の負の遺産を片付け、投資に余裕さえできてきた。不動産投資といっても、目の届く福岡市内の不動産はバブル状態。今、買う必然性はない。それなら、設備や電気工事業者を買収して、工事を内製化、利益率を高めようという方針となった。いくつか候補は挙がったものの、いまだに決定打となる事案は出てきていない。

 さらに買収希望側をもう1社。ある専門工事業者は代替わりと同時に増収続き。公共工事で念願のランクアップを果たした。しかし、現ランクにはすでに多くの猛者たちが存在する。しばらくは現ランクでの受注は厳しいと判断。そこで、自社よりも下のランクの同業者を傘下に収めることで、公共工事を受注しようと考え、企業買収を進めている。

 一方で、売却希望側の事情は時代を反映している。福岡都市圏を離れた山間部に本社を構える土木業者がある。創業以来、地元のインフラ整備に尽力してきた。事業を拡大するわけでもなく、堅実に経営は続いていたが、押し寄せてきたのは高齢化と人手不足。後継者として、育ててきた親族外の社員が突然の退職。時を同じくして、現代表は体調を崩し、会社は事実上休眠状態となった。いくらか残っている借入金額にほんの少しの上乗せして売却金額を提示し、売却先を探している。ただし、建設業許可はあれど、人がいないことがネックで交渉は難航している。

【東城 洋平】

 

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