2024年04月20日( 土 )

7月15日上場予定のLINE いささか脆弱な経営力(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 今年最大級の大型上場として世間から注目を集めているLINE。7月15日に東京証券取引所に、さらに米国ニューヨーク証券取引所にも上場する”日米同時上場”を果たす。経済マスコミの間ではもてはやす声が多いが、実は子細に検討すると、かなり行き当たりばったりの経営なのだ。

business_iph 毎日新聞の報道によると、LINEの担当者は昨年5月の段階で「未使用残高が約230億円と莫大なため、とても供託できない」「1年近く前から『通貨』といえる状態だったのに届けないでいたため、金融庁から処分を受ける可能性もあります」などと社員にメールで伝えていた。しかし、LINE側は金融庁(関東財務局)の指摘を逃れようと、アイテムの用途を制限して『通貨』に該当しないようにしたのだ。こうした”小細工”も関東財務局の立ち入り検査ですべて露見し、2016年3月31日を基準日として前払い式支払い手段の未使用残高の2分の1以上を供託しなければならなくなった。LINEはすでに一部を供託しており、追加で供託しなければならない金額は約126億円になるという。このためLINEは銀行との間で126億円の発行保証金保全契約を結び、必要な供託額を工面している。

 おそらくは東証への上場審査中に不備が発覚したのだろうが、これなどもLINE経営陣のコンプライアンス意識が問われる問題だろう。タレントのベッキーの不倫騒動でLINE上のやり取りが第三者に筒抜けになるスキャンダルに見舞われたが、セキュリティ面にも課題があるのかもしれない。
LINEは11年3月11日の東日本大震災を機に日本人スタッフが中心になって開発したというが、「実態は韓国で流行しているカカオトークというメッセージアプリを日本でまねただけ」(ITジャーナリスト)という見方がある。韓国で流行ったものを日本できめ細かくアレンジし、それで日本市場に受け入れられたようなのだ。

 実際、このほど公表された役員名簿を見ると韓国人らしき人が大勢おり、実質的なトップはネイバーの創業者である李海珍会長のようだ。さらに実際に経営の中核を切り盛りしているのは日本人トップの出澤剛社長というよりも、やはりネイバー出身で技術畑を見ている慎ジュンホ取締役チーフ・グローバル・オフィサーというのがもっぱらの見方だ。ストックオプションを含めた報酬額が出澤氏が1億円程度なのに対し、慎氏は52億円という破格の金額からもそれは裏付けられる。実態は韓国勢が主導しているのに対して、あえてそこを前面に出さなかった面が強いのである。

 しかも急成長しているとはいえ、損益は赤字。1,206億円の売上高なのに純損益は79億円の赤字なのだ。営業費用が思いのほか大きく、利益体質にはなっていない。新興企業は損益よりも成長を優先する度合いが強いとはいえ、高収益体質とみられていただけに株式市場からは意外の感をもって受け止められている。
 とはいえ、今年の大型上場の主力銘柄の1つ。上場すれば時価総額は6,000億円にもなりそうだ。LINEは市場から1,000億円程度を調達し、負債の返済や新規投資に充てるとみられている。

(了)
【経済ジャーナリスト・車 光】

 
(前)

関連記事